判例(退職金)

February 22, 2018

京都市立浴場運営財団ほか事件‐京都地判 平29・9・20 労働判例1167号34頁

【事案】
 Y1の正規職員,嘱託職員であるXらが,Y1財団に対し,Y2市と連帯して未払退職金の支払を求め,Y2市に対し,主位的に,Y1財団と連帯して未払退職金の支払を,予備的に,Y1財団との共同不法行為が成立するとして,国家賠償請求権に基づき,Y1財団と連帯して未払退職金相当額等の支払を求めたもの。

【判断】
「X正規職員らの退職金総額が別紙一覧表の各退職金総額欄記載のとおりであることにつき,当事者間に争いはない。」
「X正規職員らのY1財団に対する請求は,別紙一覧表の各残額欄記載の未払退職金及びこれに対する福祉機構から一部弁済のあった日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに,Y1財団からの一部弁済後福祉機構からの一部弁済前の時点での未払退職金に対する平成27年4月1日から福祉機構からの一部弁済のあった日までの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから認められない。」

「(1)当事者間に争いのない事実,証拠(〈証拠略〉,X1本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア X嘱託職員らの1日の勤務時間は,正規職員の同勤務時間が7時間45分であるのに対し7時間15分であった。X嘱託職員らの出勤日は,正規職員の出勤日が週5日であるのに対し,週4日であった(争いがない)。
 イ X嘱託職員らとY1財団との労働契約は,1年の期間の定めのある労働契約であったが,X1との同契約は8回,同X2との同契約は5回,同X3との同契約は13回,同X4との同契約は7回,更新された(争いがない)。
 ウ 上記契約の更新の際には,契約内容についての交渉もなく,Y1財団が用意した文書に嘱託職員らが押印して提出すると,Y1財団から当該嘱託職員に対し更新通知書が送られた(X1本人)。
 エ Y1財団の嘱託職員の給与は,正規職員の給与に比して,1月あたり10万円程度低かった(〈証拠略〉,弁論の全趣旨)。
 オ Y1財団の正規職員と嘱託職員の業務内容及び責任の程度は全く同じであり,嘱託職員であっても主任になる者もいた(〈証拠略〉,X1本人,弁論の全趣旨)。
 カ Y1財団は,正規職員らを減らし,嘱託職員やアルバイトにより労働力を補填し経費削減を図る経営方針であったため,嘱託職員を正規職員とせず,嘱託職員のまま契約を更新していた(不利益事実の承認)。
 Y1財団の正規職員は,Y1財団解散時においては,18名しかおらず,嘱託職員が全職員に占める割合は約70パーセントにのぼっていた(〈証拠略〉)。
(2)ア 上記認定事実によれば,X嘱託職員らは,業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が正規職員と同一の短時間労働者というべきである。
 確かに,X嘱託職員らとY1財団との労働契約は,期間の定めのないものではなかったけれども,同契約は,少ないものでも5回,多いものでは13回にもわたって更新されている。また,上記のとおり,嘱託職員の職務の内容は恒常的なもので,かつ正規職員の職務の内容と全く同一であり,さらに契約の更新手続も形骸化していたと評価し得る程度に至っており,実際にも過去に雇止めをされた嘱託職員がいるといった事情も見当たらない。その上,Y1財団が,嘱託職員との労働契約を繰り返し更新してきたのは,Y1財団が,上記のとおり,正規職員を削減し,その後は正規職員を採用せず,嘱託職員との契約を繰り返し更新することで,経費削減を図るという経営方針を採っていたからである。
 これらの事情に照らすと,X嘱託職員らとY1財団との労働契約は,旧パート法8条2項所定の「反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約」であると認められる。
 そして,上記認定事実のとおり,嘱託職員であっても主任になる者もいたこと,嘱託職員には他浴場への異動が予定されていないにもかかわらず正規職員にはそれが予定されていた等といった事情も認められず,正規職員と嘱託職員との間での人材活用の仕組み,運用が異なっていたわけではないことからすると,X嘱託職員らは,旧パート法8条1項所定の「その全期間において,正規職員と職務の内容及び配置の変更の範囲が同一の範囲で変更されると見込まれるもの」に該当すると認めるのが相当である。
 そして,このようなX嘱託職員らが,正規職員には退職金が支給されるのに対し,何ら退職金を支給されないことについて合理的理由は見当たらない。
 よって,Y1財団が,X嘱託職員らに退職金を支給しないことは,旧パート法8条1項が禁ずる短時間労働者であることを理由とした賃金の決定に関する差別的扱いであり,違法といわなければならない。
 この点Y1財団は,旧パート法9条が退職手当を「賃金」から除外していること,退職手当には功労報償的な性格があることから,同法8条1項の「賃金」に退職手当は含まれない旨主張している。しかしながら,同法が,9条ではじめて退職手当を「賃金」から除外していることからすると,同法8条1項の「賃金」には退職手当が含まれると解するのが合理的である。また,同法8条は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者に係る労働契約を規律しているのに対し,同法9条は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く短時間労働者に関する労働契約を規律しているものであり,その対象も異なると解される。したがって,Y1財団の上記主張は採用できない。
 イ X嘱託職員らは,旧パート8条1項違反の効果として,正規職員らに関する退職金規程がX嘱託職員らにも適用されると解するのが合理的であり,X嘱託職員らは,同規程に基づく退職金請求権を有する旨主張する。
 しかしながら,旧パート法には,労働基準法13条のような補充的効果を定めた条文は見当たらず,旧パート法8条1項違反によって,X嘱託職員らの主張するような請求権が直ちに発生するとは認め難い。
 もっとも,旧パート法8条1項に違反する差別的取扱いは,不法行為を構成するものと認められ,X嘱託職員らは,Y1財団に対し,その損害賠償を請求することができるというべきである。
 そして,Y1財団の嘱託職員の基本給は,正規職員の基本給より低額に抑えられていたこと,Y1財団の退職手当は,退職金規程に基づき基本給に勤続年数に応じた係数をかけることによって機械的に算出されるものであることからすると,同規程に基づいて算出された退職金相当額がX嘱託職員らの損害である。」

「Y2市は,Y1財団を,その基本財産を全額拠出し,同和問題をはじめとする人権問題の解決に資すること等を目的として設立したことは確かである。しかし,Y1財団が京都市立浴場の経営主体及びその責任の明確化等を図るとともに経営努力を促進することをも目的として設立されたという経緯からすると,上記事実は,Y2市が,Y1財団の実質的な経営者であることを基礎付けるものであるとまではいえない。」

「Y2市が,Y1財団の実質的な共同経営者であるとは認められず,この点に関するX正規職員らの主張は認められない。」

「Y2市が,法人格の異なるY1財団の旧パート法8条1項違反について,Y1財団と共同して責任を負うと認めるには至らないことから,この点に関するX嘱託職員らの主張も採用できない。」

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