学校法人A学園(試用期間満了)事件‐那覇地決 令元・11・18 労働経済判例速報2407号3頁

【事案】
 日本及びイギリスの大学を卒業し,福岡及びイギリスで教員として働いた経験があり,直近では大阪の介護施設附属の日本語学校で教務主任を務め,Yに日本語教師として採用され,延長された試用期間満了後に,主としてコミュニケーション能力の不備を理由として解雇されたXが,必要なコミュニケーションをとり,また,このような指導を受けていなかったのであるから,同解雇は無効であるとして,Yに対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等の仮処分を求めたもの。

【判断】
「(3) …Z1及びZ2副学長が様々な角度からXのコミュニケーション上の問題点を伝えようとしているにもかかわらず,Xは自身の問題点を省みる姿勢に乏しく,話し手の意図を正しく受け止められなかったり,言葉尻を捉えた反論に終始して論破しようとしたり,議論の前提を踏まえた会話ができてなかったり,自身の意見に固執する姿勢が見て取れる。このようなXの応答にZ1とZ2副学長は対応に苦慮していたが,Xはそのことすら認識していたか疑わしい。
 (4) Yは,本件会議の後,Xがミーティングの場で最低限の発言すらしようとせず,素っ気ない態度に終始したと主張しているが,前記のとおりのXのコミュニケーション上の問題点に加え,Xは,日本語ランチテーブルのミーティングで反対意見を述べたこと自体がZ1及びZ2副学長によって失礼と取られたと憤慨し,本件準備書面で,意見を述べたこと自体が失礼と扱われて不当であり,このため発言を控えるようにしていたと主張していることからすると(なお,…Z1及びZ2副学長は,発言内容やその伝え方を問題にしているのであって,反対意見を述べること自体を咎めているわけではなく,むしろ,積極的に意見を交わすべきと伝えている。),Yの主張に近い状況にあったことが窺える。
 このような状況では,XがZ1に友好的な対応をとることは考えにくいから,Xは,ミーティング以外でも,Z1やXと非友好的な同僚とは積極的なコミュニケーションをせず,むしろ,自身が許容されると考える中で最低限度のコミュニケーションに終始したことが推認できる。
 (5) Xは,本件仮処分手続において,Yが問題点として指摘する,無断で試験時期をずらしたこと,勤務時間内にボランティアに参加したこと,退勤時間を他の同僚とずらしたこと等について,自身の判断の正当性を主張している。しかし,仮にこれらの事項についてXの主張に合理性があったとしても,これらの事項は,少なくとも事前に上司や関係する他の職員に相談しなければ職員間で無用な軋轢を生む可能性をはらむものばかりであり,Xの方から念のために積極的な相談,報告といったコミュニケーションをすべきであったといえる。しかし,前記のとおりXのコミュニケーション上の問題点及び飽くまで自身の判断の正当性の主張に力点を置く本手続におけるXの対応からすると,上記の問題点に関するXの対応は,Yの職場で求められる最低限のコミュニケーションの域に達していなかったことが容易に想像できる。
 (6) 上記のように,Xのコミュニケーション及び上司や同僚との関係構築に向けた姿勢には数々の問題点があり,上記のとおり必要なコミュニケーションがとれず,むしろ試用期間の延長によって悪化したことが認められる。一般的に本採用を目指して必要以上に努力し,同僚に気を遣いがちな試用期間ですら,Xは上司や同僚との間で種々の軋轢を生じさせてしたったといえる。これらの問題点は,いずれも試用期間を経て初めて発覚し得るものであるといえ,上記の経過によれば,Xが上司からの指導等によって上記の問題点を改善できる見込みは薄い。Yが雇用を継続していれば,Xのコミュニケーション上の問題によって更に職場環境が悪化していくことが容易に想像できることからすると,本件の雇用が2年間の期間限定であることを考慮しても,Yが試用期間終了をもって解雇を選択したこともやむを得ないといえる。」