判例(解雇)

September 26, 2017

北海道(懲戒免職処分等取消請求)事件‐札幌地判 平28・6・14 判例時報2332号95頁、札幌高判 平28・11・18 判例時報2332号90頁

【事案】
 Xが、免職の処分及び一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けたため、Yに対し、当該処分の各取消を求めたもの。

【判断】
〔第1審〕
「Xが地方公務員法29条1項及び3号に定める懲戒事由に該当することは、・・・のとおりであるところ、ア教員は高い倫理と廉潔性が求められるということができるのであり、本件非違行為は極めて重大な非違行為であるということもできること(・・・)、イ本件非違行為は懲戒処分の指針にいう窃盗と類似するということもできるのであり(・・・)、本件非違行為の量定に当たり懲戒処分の指針の窃盗の項目の量定を参照することもできること、ウ本件非違行為がされたことによって、インターネットのオークションに参加する公衆のプログラムの著作物に係る著作権に対する規範意識に重大な悪影響を及ぼしたと認めることができるのであり、本件非違行為の態様は悪質であるということもできること(・・・)、エXは、当初は、興味本位で、インターネットのオークションサイトに本件ソフトウェアを出品したものの、その後は、生活費の不足分等を稼ぐという利欲目的から、本件ソフトウェアをB社に無断で複製し、これを販売するという行為を繰り返していたものであるところ、その利欲目的は相当に強固なものであったと認めることができるのであり、本件非違行為の動機は悪質であるということもできること(・・・)、オB社や正規の販売業者に生じた売上げの減少は相当額に及ぶと認めることができるのであり、Xが不正に得た利益も必ずしも少額ではないから、本件非違行為の結果は相当に重大であるということもできること(・・・)、カ本件非違行為がされたことによって、インターネットのオークションに参加する公衆のプログラムの著作物に係る著作権に対する規範意識に重大な影響を及ぼしたと認めることができることは、上記ウのとおりであり、また、Xが本件非違行為をしたことによって、Yの教育公務員が遂行する地方教育行政に係る職務に対し、児童生徒やその保護者、地域社会を初めとする社会全体が有する信頼が著しく低下したと認めることができるのであって、本件非違行為の影響は重大であるということもできること(・・・)を併せて考えられると、・・・Xの本件非違行為の前後の態度には酌むべき点が少なからずあること、クXは本件免職処分以外の懲戒歴を有しないこと(・・・)に加えて、ケ本件免職処分がXの教員たる地位を失わせるという重大な結果を招来することをも斟酌しても、処分行政庁が、これらの事情を総合的に考慮し、その裁量的判断によって、Xに対し、懲戒処分としての免職の処分(本件免職処分)をしたことについて、それが社会観念上著しく妥当を欠くということまではできないのであり、本件免職処分は処分行政庁がその裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用してした違法なものであるということはできない。」

「Xは、地方公務員法29条の規定による懲戒免職の処分である本件免職処分を受けて退職したものである。そこで、処分行政庁が、本件条例12条1項の規定により、Xに対し、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分である本件退職手当支給制限処分をしたことが、その裁量権の範囲を逸脱し、又はそれを濫用したものであるか否かについて検討するに、(1)教員は高い倫理と廉潔性が求められるということができるのであり、本件非違行為は極めて重大な非違行為であるということもできること、(2)本件非違行為がされたことによって、インターネットのオークションに参加する公衆のプログラムの著作物に係る著作権に対する規範意識に重大な悪影響を及ぼしたと認めることができるのであり、本件非違行為の態様は悪質であるということもできるし、また、Xが本件非違行為をしたことによって、Yの教育公務員が遂行する地方教育行政に係る職務に対し、児童生徒やその保護者、地域社会を初めとする社会全体が有する信頼が著しく低下したと認めることができるのであって、本件非違行為の影響は重大であるということもできること、(3)Xは、当初は、興味本位で、インターネットのオークションに本件ソフトウェアを出品したものの、その後は、生活費の不足分等を稼ぐという利欲目的から、本件ソフトウェアをローランド社に無断に無断で複製し、これを販売するという行為を繰り返していたものであるところ、その利欲目的は相当に強固なものであったと認めることができるのであり、本件非違行為の動機は悪質であるということもできること、(4)B社や正規の販売業者に生じた売上げの減少は相当額に及ぶと認めることができるのであり、Xが不正に得た利益も必ずしも少額ではないから、本件非違行為の結果は相当に重大であるということもできることは、・・・のとおりであり、これらを併せて考えると、(5)Xは管理職ではなく、一般教員であったこと(・・・)、(6)Xの本件非違行為の前の勤務の状況は特に不良なものではなく、Xには相当な勤続の功労があったということができること(・・・)、(7)Xは、本件非違行為が発覚した後は、本件非違行為をしたことを真摯に反省し、被害弁済に努めており、自暴自棄な態度に陥ることなく、勤務を継続していたということができること(・・・)、(8)Xは本件免職処分以外の懲戒歴を有しないこと(・・・)を斟酌しても、処分行政庁が、これらの事情を総合的に考慮し、その裁量権の行使として、本件非違行為にXの永年の勤続の功労を全て失わせるほどの著しい不信行為であると判断し、その裁量的判断によって、Xに対し、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分(本件退職手当支給制限処分)をしたことについて、それが社会通念に照らして合理性を欠くということまではできないのであり、本件退職手当支給制限処分は処分行政庁がその裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用してした違法なものであるということはできない。」


〔控訴審〕
「職員が懲戒事由に該当する場合に、懲戒をするか否かの判断及び懲戒をするときはどのような処分を選択するかの判断は、内部の事情に精通し、平素から職員の指揮監督の衝に当たる懲戒権者の裁量に委ねられていると解するのが相当であって、懲戒権者は、懲戒をするか否か及び懲戒をするときはどのような処分を選択するかを、懲戒事由に該当する行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該職員の上記行為の前後の態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の職員ないし社会に与える影響等の諸般の事情を総合的に考慮し、その裁量的判断によって決定することができるというべきである。したがって、懲戒権者がその裁量権を行使してした懲戒処分としての免職の処分を裁判所が審査する場合、裁判所は、懲戒権者と同一の立場に立って、懲戒をすべきであったか否か及び懲戒すべきであったときはどのような処分を選択すべきであったかについて判断した上、その結果と免職の処分とを比較して、その適否を論ずべきではないのであって、懲戒権者がその裁量権を行使してした免職の処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者が、その裁量権の範囲を逸脱し、又はそれを濫用したものであると認められる場合に限り、違法となるというべきである(最高裁判所昭和52年12月20日第3小法廷判決・民集31巻7号1225頁、最高裁判所平成2年1月18日第1小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。」

「本件非違行為は、懲戒処分の指針における金銭事故及び窃盗に近似しているとはいえず、懲戒処分の指針が金銭事故及び窃盗の量定について免職を基本としていることを参照して、本件非違行為の量定をするのは相当でないところ(・・・)、①本件非違行為の手口は稚拙であり、比較的簡便に行うことができるものであること等、その性質及び態様において極めて重大な非違行為であるとまではいえないこと(・・・)、②本件非違行為の生活費の不足等を稼ぐという動機をもって、極めて悪質であるとまではいえないこと(・・・)、③Xの得た30万円という利益は多額とまではいえないこと、及び、逮捕もされず、Xが被害者であるB社との間で示談をし、示談金の全てを支払い、B社が宥恕の意思を表明し、犯罪として起訴されるには至らなかったことからすると、本件非違行為の結果を重大であるとまでいうことはできないこと(・・・)、本件非違行為は職務外の行為であり、Xが本件非違行為をしたことによって、Yの教育公務員が遂行する地方教育行政に係る職務に対し、児童生徒やその保護者、地域社会を初めとする社会全体が有する信頼が著しく低下したとまで認めることはできず、本件非違行為のその点での影響は重大であるとはいえないこと(・・・)、④Xの本件非違行為の前の状況は良好なものであり、Xには相当な勤続の功労があったということができること(・・・)、Xが本件非違行為をしたことを発覚後直ちに認め、真摯に反省し、被害弁済に努め、自暴自棄な態度に陥ることはなく、校長の依頼に応じて従前どおり勤務を継続していたこと(・・・)、⑤Xにはこれまで懲戒処分歴がないこと(・・・)、⑥本件免職処分がXの教員たる地位を失わせるという重大な結果を招くことをも併せ考慮すると、本件免職処分は、社会観念上著しく妥当性を欠き、処分行政庁がその裁量権の範囲を逸脱したものというべきである。」

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