判例(社会保険)

June 26, 2017

グローバルアイ事件‐東京地判 平18・11・1 労働判例926号93頁

【事案】
 Xが、在職中雇用保険料相当額を給与から控除されていたにもかかわらず、YがXの雇用保険加入手続を行ったことにより損害を被ったとして損害賠償等を求めたもの。

【判断】
「本件合意の際には、両当事者ともに本件加入漏れの事実には気が付いていなかったものであって、Xに係る雇用保険加入手続がなされていることを前提に、解雇をめぐる紛争について合意がなされたものであること、本件合意には清算条項が記載されているものの、それは文言上完全清算ではなく「本件紛争に関し」という限定が付されているものであることの事情に照らし、本件合意の存在は、Xの本件請求を妨げるものではないと解するべきである。」

「YはXを雇用した・・・日から退職した・・・日まで、その給与から雇用保険料を控除する一方で、Xに係る雇用保険加入手続を忘れ、本件合意を承けてXに係る離職手続をする際にそのことが判明するまで、本件加入漏れに気付かないまま推移したというのであるから、Yには、X・Y間の雇用契約に付随する義務の違反があることは言うまでもなく、Yは債務不履行責任を免れない。」

「(1) 教育訓練給付金の支給については、Xは、本件合意によりYを退職した際に、教育訓練給付金の支給を受けて何か法律関係か英語関係の講座を受講したいと思っていた旨述べるが、具体的な受講講座や目的が決まっていたわけではなく、かつ、実際に受講してその受講料を払ったというものでもないことから、その希望はやや漠然と受講したいと思っていたという程度であることが窺われる。また、教育訓練給付金の額についても、・・・仮にXが受講した場合に支給を受けられる教育訓練給付金の額は、受講者本人が教育訓練施設に対して支払った教育訓練経費に対応して決まってくるのであるから(〈証拠略〉)、Xにおいて受講もしていない現状においては、その支給見込み額も不明というほかない。
 以上によれば、Xに具体的な経済的損害が発生していることを認めるに足りる証拠はない。よって、本件加入漏れとの間に相当因果関係のある具体的な経済的損害が発生したとまではいえないところである。
(2) 他方、Xとしては、教育訓練に係る講座の受講の希望を有していながら、教育訓練給付金の支給要件期間が不足していることから、同給付金支給の機会を得られなかったものであるところ、その原因が本件加入漏れによることは明らかである。本件加入漏れがなければ金額はともかくとして同給付金の支給を受ける可能性があったのであるから、その可能性を失ったことに対する精神的損害は慰謝すべきである。
(3) その他、本件加入漏れ発覚後においてもYのXに対する回答が遅れ、Xに再三の催告を余儀なくさせるなど、その対応に問題があったこと等の事情を考慮して、慰謝料は・・・円が相当である。」

 │  このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote  (16:00)

記事検索
カテゴリー
月別アーカイブ