判例(社会保険)

April 16, 2018

わいわいサービス事件‐大阪地判 平28・5・27 労働判例1169号68頁,大阪高判 平29・7・27 労働判例1169号56頁

【事案】
 Yに自らの車両を持ち込み,Yの配送業務の下請けをし,その後,顧客の倉庫作業を行うようになったXが,倉庫作業についてX・Y間で雇用契約が成立しており,Yによる解雇は違法無効であるとして,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めたもの。

【判断】
〔第1審〕
「Xは,本件契約が雇用契約であり,Xが労働基準法及び労働契約法上の労働者であると主張するところ,上記各法律上の労働者とは,使用者による指揮監督下において労務を提供し,当該労務提供の対価(賃金)を受ける者をいうと解される。そこで,以下,本件契約について,XがYによる指揮監督下において労務を提供し,当該労務提供の対価として報酬を受ける旨の契約ということができるか否かを検討する。
 ア Xの業務遂行に関するYの指揮命令の有無及び程度について
  (ア) ・・・Xは,倉庫業務の内容や遂行方法について,A社及びB社から指示を受けており,Yからは一切指示を受けていない。
 そこそも,Yは,平成25年2月中旬までの約1か月間,Xが倉庫作業を行っていたことすら把握しておらず,そのことを把握した後も,何ら業務指示も出していないのであり,業務遂行上の指揮監督を認めることはできない。
  (イ) この点,Xは,Yが自ら雇用したXをB社に派遣していたのであるから,派遣先から指示を受けていれば,派遣元から指示を受けていないからといってXの労働者性は否定されないと主張する。
 しかしながら,労働者性の判断に当たっては,契約当事者であるX・Y間において,YによるXへの指揮監督の有無を実質的に検討すべきであり,YがXに対し,B社やA社の指示に従って業務を行うように指示していたような特段の事情も認められない。
 そうすると,この点に関するXの主張は採用できない。
 イ 業務遂行における時間及び場所の拘束について
  (ア) Xは,午後8時から翌日午前8時まで豊中倉庫において就労することが予定されており,業務遂行(ママ)おける時間及び場所の拘束を受けていると考えることも可能であるが,本件契約は,豊中倉庫における業務を予定しており,場所的拘束は業務の性質上当然に生ずるものであるし,勤務時間についても,A社やB社の指示によるものであり,Yの指揮命令によるものではない。
 かえって,Xは,B社らと調整さえ行えば,Yの意向と関係なく,勤務時間を自由に変更することやXの代わりの者に倉庫業務を行わせることも可能であったと認められるのであり(下記ウ参照),このことは,Xの立場が,使用者によって労務提供の時間を指定され,管理されることが通常である労働者の立場とは異なるものであったと評価できる事情といえる。
  (イ) そうすると,Xによる豊中倉庫における午後8時から翌日午前8時までの就労について,時間的拘束性を認めることはできない。
 ウ 仕事の依頼,諾否の自由の有無等について
  (ア) …B社は,倉庫作業をXだけで行われ(ママ)ばならないと考えていた訳ではなく,Xは,A社やB社と調整さえすれば,代わりの者に倉庫作業を行わせることで勤務時間を変更したり,休んだりすることが可能であったといえる。
 そして,勤務時間の変更や休日の取得については,Yの許可を必要とするものではなく,Xは,業務従事の指示等に対する諾否の自由を有していたと考えるのが相当である。
  (イ) 実際に,Xは,倉庫業務(ママ)に関し,休日の取得について,A社の従業員とは何度も話をしながら,Yに対しては,休日を与えるように申し入れを行っていない(…)。かかる行動は,Xが,業務従事の指示について応諾するか,拒否するかについて,Yの意向を踏まえなくてもよいと考えていたことをうかがわせる事情といえる(仮に,Xが,倉庫作業を休むのにYの了解が必要であると考えていたのであれば,Yとも話し合うのが当然あるところ,Xの供述を踏まえても,Xがそのような行動をとったとは認められない。)。
  (ウ) さらに,B社がX以外の者が倉庫作業を行うことを許容していたことに照らせば,代替性も認められる。
 エ 報酬の労務対償性について
 Xの報酬は,時給計算されており,一定時間労務を提供したことに対する対価といえる。
 しかしながら,本件契約に関する報酬は,XとB社との間で取り決められたものであるし,本件契約の締結に至る経緯等に照らせば,報酬が時間給を基礎に計算され,労働の結果による較差がないといった事情を過度に重視することは相当ではない。
 オ その他事情
  (ア) …本件契約は,本件配送業務請負契約を前提として,倉庫作業について新たに締結されたものである。また,B社からYに送付される請求明細書も配送業務に関するものと一体のものとして送付されているし,Yも,Xに対し,配送業務と区別なく報酬を支払い,請求証明書を交付している。
 そもそも,本件契約の締結については,Yは一切関与しておらず,締結の事実を把握した後も,B社から支払われる金銭の一部を本件配送業務請負契約における帳合料(手数料)と同様に控除して,残額を支払っているのであり,Yにおいては,本件契約は,本件配送業務請負契約においてB社の指示のもとで配送業務をXに請け負わせていたのと同様に,倉庫業務(ママ)についてもXに請け負わせるものであるとの認識を有していたと認めるのが相当である。
  (イ) また,Yにおいては,Xのように倉庫作業を行う従業員はおらず,Yの他の労働者(従業員)の勤務の実態とも異なっている。
 カ 評価
  (ア) 上記の各事情に照らせば,本件契約について,XがYの指揮監督下において労働し,その対価として賃金の支払を受ける旨の雇用契約であったと評価することは困難であり,Xは,労働基準法及び労働契約法上の労働者に該当しないというべきである。
  (イ) Xは,枚方公共職業安定所長が平成27年3月16日付けで,平成25年3月16日にさかのぼって,Xの被保険者資格を確認したことが理由に行政がXの労働者性を認めている旨主張する。しかしながら,同認定は,雇用保険の被保険者資格の取得に関するものであり,当裁判所の判断を拘束するものではないし,同事実を踏まえても上記判断を覆す事情とはいえない。
 以上のほか,Xの主張を踏まえて検討しても,本件契約が雇用契約であり,Xが労働基準法及び労働契約法上の労働者であると認めるに足りる証拠はない。
  (ウ) したがって,本件契約が雇用契約であるとするXの主張は理由がない。」

〔控訴審〕
「当裁判所は,XとYとの間に雇用契約関係が成立したとは認められないと判断する。その理由は次のとおりである。
 ア Xの労働者性
 まず,使用者がYであるか否かはひとまず措き,Xが,倉庫作業において,労働基準法及び労働契約法上の労働者に当たるか否か検討する。上記各法律上の労働者とは,使用者による指揮監督下において労務を提供し,当該労務提供の対価(賃金)を受ける者をいうと解される。倉庫作業において,Xが使用者による指揮監督下において労務を提供し,当該労務提供の対価として報酬を受ける者に当たるか否かが問題となる。
 この点,Xは…倉庫作業の内容や遂行方法について,B社から指示を受けその指揮監督に服していたものであり(〈証拠略〉),業務遂行における時間及び場所についても,B社らの指示により,午後8時から翌日午前8時まで豊中倉庫において就労すると定められ,業務遂行における時間及び場所の拘束を受けていたものである。また,Xは,倉庫作業において,自己の所有する機械や部品を使用することもなく,報酬も時給計算されており一定時間労務を提供したことに対する対価といえるものであった。
 そうすると,倉庫作業において,Xは,使用者による指揮監督下で労務を提供し,当該労務提供の対価として報酬を受けていたものと認められるから,労働基準法及び労働契約法上の労働者に当たると解される。
 これに対し,Yは,Xが豊中倉庫内にいるときでも倉庫作業以外のことを自由に行えたし,倉庫作業もXが自分の裁量で行う性質のものであり,倉庫作業を行わせるために他の者を雇ったり,他の者に業務を委託することも認められていたと主張し,Y代表者の陳述書(〈証拠略〉)も同主張に沿うものである。しかし,Y代表者は,Xが携わっていた倉庫作業の実情をよく知らなかったことを自認しているから,Xが,豊中倉庫内にいるときに倉庫作業以外のことを自由に行えたとか,倉庫作業を行わせるために他の者を雇ったり,他の者に業務を委託することが許されていたという上記陳述書記載の事実をY代表者が知り又は知り得たか疑問があり,これを容易に信じることはできず,他にそのような状況が存したことも認めるに足りる証拠もない。また,Xにおいて,倉庫作業の勤務時間を変更することやXの代わりの者に倉庫作業を行わせることが可能であったとしても,それらは上記各法律上の労働者であることと必ずしも矛盾するものではないから,これらの事実は上記認定を左右しない。
 イ XとYは倉庫作業について雇用契約関係にあるか
 次に,Xが倉庫作業についてYとの間で雇用契約関係にあるか否かについて検討する。
  (ア) …Xが平成24年12月頃Yとの間で締結した本件配送業務請負契約は,倉庫を保有するA社からB社が配送業務を請け負い,これをYが下請けしてさらにXに請け負わせるものであったところ,その業務内容は,XがA社の倉庫において,B社の従業員の指示に従い,自らが所有する車両を使用して配送を行うものであった。上記業務内容に照らすと,本件配送業務請負契約が請負を仮装した労働者派遣に当たるものではないことが明らかであって,真正な請負契約であると認められるから,Xが本件配送業務請負契約のもとにおいてYの雇用する労働者に当たると解することはできず,本件配送業務請負契約から直ちにXとYとの間の雇用契約の成立を認めることができないことは明らかである。
  (イ) ところが,その後,Xは,B社の従業員から,A社の豊中倉庫の内勤業務をやらないかと打診され,業務内容や労働条件等はいずれもB社やA社から指示・説明を受けて,平成25年1月16日から倉庫作業を開始したものである。そして,倉庫作業の開始に当たり,XがDに対しB社らから上記の打診があったことを告げ,Dがこれに賛意を示したことがあった(〈証拠略〉)としても,XとYとが,業務内容や労働条件など雇用契約の要素となる事項を協議し合意した事実は何らうかがえず,また,YがB社らにXとの雇用契約締結のための代理権を予め授与した事実も証拠上何ら見当たらない。
 そうすると,Xが倉庫作業を開始するに当たって,XとYが,倉庫作業を業務内容とする雇用契約を締結したものと認めることもできない。
 他方,前記ア認定のとおり,XとYとの本件配送業務請負契約が真正な請負契約であることに照らすと,XとB社らが別途雇用契約を締結することが妨げられるものではなく(したがって,Dがこれに異論を挟まないのは当然である。),①上記認定判断のとおり,XとYが倉庫作業開始時点で同作業を業務内容とする雇用契約を締結したとは認められないこと,②Xに倉庫作業に従事させるべく働きかけたのはB社らであったこと,③倉庫作業の報酬額を決定したのもB社らであること,④倉庫作業に関して,Yが配置を含むXの具体的な就業態様を一定の限度であっても決定し得る地位になかったことに照らすと,前記アのとおり労働基準法及び労働契約法上の労働者に該当するXと雇用契約を締結したのは,むしろB社又はA社であると解する余地がある(最高裁平成21年12月18日第2小法廷判決・民集63巻10号2754頁参照)。そうすると,この点に照らしても,前記アのとおり倉庫作業においてXが労働基準法及び労働契約法上の労働者であると認められ,かつ,A社,B社,Y,Xという順次請負関係が存在するからといって,単純にXと雇用契約を締結したのがYであると認定することはできない。」

「(エ) なお,雇用契約は,当事者間の形式にかかわらず成立を認めるべき場合があり,Xが倉庫作業に従事したことが,請負の形式をとったYによる労働者派遣ととらえることができるか否かについて,さらに検討する。
 労働者派遣とは,自己の雇用する労働者を,当該雇用関係の下に,かつ,他人の指揮監督を受けて,当該他人のために労働に従事させることをいい(ただし,当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない。),請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても,当該事業主が当該業務の処理に関し,労働者派遣事業と請負により行われる事業との区別(ママ)に関する基準2条の各号のいずれにも該当する場合を除き,労働者派遣事業を行う事業主とされる(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区別(ママ)に関する基準[昭和61年労働省告示第37号])。
 しかし,前記(ア)で判示したとおり,そもそもXは,配送業務に関してYの雇用する労働者ではなかったから,上記法令に照らしても,YがXをB社らのもとで本件配送(ママ)請負契約に基づき配送業務に従事させたことが労働者派遣に当たることはなく,そうすると,その後にXがB社らのもとで倉庫作業に従事しても,YがXをB社らのもとに労働者派遣をしたと認めることの形式的前提を欠くというべきである。
 また,実質的に検討しても,請負人と労働者は,法律上の取り扱いが様々に異なり,そのため注文主と雇用者の責任も大きな相違がある。雇用契約も契約であるから,基本的に雇用者と被用者との間で契約を締結する意思(効果意思)が必要であるところ,元請人,下請人,孫請人と順次,請負契約が成立している状況の下で,孫請人の実体が労働者であるのに下請人との間で請負契約を仮装していたり,下請人において孫請人が元請先で労働者として就労することを予定して孫請人を元請先に差し向けるといういわゆる偽装請負のように下請人の雇用者であることを事実上の前提としている場合は別論として,真正な順次請負関係である場合に孫請人が下請人を介することなく元請人のもとで孫請業務とは異なる別個の作業に労働者として従事した場合において,下請人の意思とは無関係に,下請人と孫請人との間に雇用契約に成立を認めることは,上記法令の趣旨や労働者の保護を考慮してもなお不当であることが明らかである。そうすると,YがXを本件配送(ママ)請負契約に基づきB社らのもとで配送業務に従事させていたところ,XがYを介することなくB社らのもとで配送業務と異なる倉庫作業に労働者として従事したことによって,Yの意思によらずにXとYとの間に雇用契約が成立することはないというべきである。」
 したがって,上記法令によっても,Xが倉庫作業に従事したことが,請負の形式をとったYによる労働者派遣ととらえることはできず,他にXとYの間で雇用契約が成立したことを認めるべき法令上の根拠もない。
 (オ) なお,大阪労働局雇用保険審査官作成の決定書(〈証拠略〉),近畿厚生局社会保険審査官作成の決定書(〈証拠略〉),労働保険審査会作成の裁決書(〈証拠略〉),大阪労働局長作成の是正指導書(〈証拠略〉)及び北大阪労働基準監督署労働基準監督官作成の是正勧告書(〈証拠略〉)は,いずれもXとY間に雇用契約の成立を認めている。
 しかし,これらの諸判断は,もともとA社,B社,Y,Xの関係が真正な順次請負関係であったことを適切に評価せず,Yが当初からXを倉庫作業に従事させるためにB社らのもとに派遣した事案と同様の見立てをしている点で失当であり,前記(ア)~(エ)において判示したことに照らして採用することはできない。
(3) 以上のとおりであるから,XとYとの間に雇用契約が成立したと認めることはできない。」

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