判例(その他)

July 11, 2018

学究社(定年後再雇用)事件‐東京地立川支判 平30・1・29 労働判例1176号5頁

【事案】
 Xが, Yに対し,定年退職前の賃金と再雇用後に支払われた賃金の差額等の支払等を求めたもの。

【判断】
「Xは,再雇用契約締結時,Yに対し,定年退職前と同一の労働条件でなければ勤務はできないと説明したこと,再雇用後も定年退職前と同様の勤務を行っていたが,Yからその勤務態様等について何ら異議を述べられたことはないことなどからすれば,XとYとの間には,定年退職前の労働条件を前提とした再雇用契約が成立した旨主張する。
 しかし,XとYとの間の再雇用契約は,それまでの雇用関係を終了させ,退職の手続をとった上で,新たな雇用契約を締結するという性質のものである以上(…),その契約内容は双方の合意によって定められるものである。そして,Yにおける再雇用契約は,その制度上,会社が示した雇用条件に再雇用契約者が同意する場合に同契約が締結されるものとされている(…)。Yは,Xに対し,再雇用後については給与が定年退職前の30パーセントから40パーセント前後になることを説明し,再雇用後の賃金額が集団指導(通常の授業)50分につき3000円の単価となる旨記載された契約書を交付した上で,同契約書に基づきXに対し給与を支払っていることからすれば(…),Yに,Xとの再雇用契約締結時,Xが主張するXの定年退職前と(ママ)との労働条件を前提とした再雇用契約を締結する意思がなかったことは明らかである。
 一方のXについてみても,Xは「時間講師としての勤務ができれば,オッケー」であった旨X本人尋問の際に供述しており,現にXが明確に不満を述べるに至ったのは,…代理人を介しての通知が最初のものであったと認められる(〈証拠略〉,X本人)。そうすると,Xも,再雇用契約締結時の時点においては,定年退職前と同一の労働条件でなければ勤務できないと説明したとは認めることができない。」

「Xは,再雇用契約の前後で賃金の差が大きいことからすれば,有期労働契約となる再雇用後の労働者と期間の定めのない労働契約である退職前の正社員との間には,労働条件に大きな相違があるといえるため,Yの定年再雇用制度における労働条件のうち賃金の定めに関する部分は,労働契約法20条に反し無効であると主張する。
 確かに,Yにおいては,定年退職後の再雇用契約は,期間の定めのある労働契約であるところ,その内容である賃金は,定年退職前の正社員の賃金の30パーセントから40パーセント前後が目安とされ,賃金の定めについて相違があるといえるため,労働契約法20条の適用が問題となる。
 しかし,証拠(〈証拠・人証略〉,X本人)及び弁論の全趣旨によれば,Xは,定年前は専任講師であったのに対し,定年後の再雇用においては時間講師であり,その権利義務には相違があること,勤務内容についてみても,再雇用契約に基づく時間講師としての勤務は,原則として授業のみを担当するものであり,例外的に上司の指示がある場合に父母面談や入試応援などを含む生徒・保護者への対応を行い,担当した授業のコマ数ないし実施した内容により,事務給(時給換算)が支給されるものであることが認められる。そうだとすれば,定年退職前は,正社員として,Yが採用する変形労働時間制に基づき定められた各日の所定労働時間の間労働することが義務付けられ,その間に授業だけでなく生徒・保護者への対応,研修会等への出席等が義務付けられているのに対し,再雇用契約締結後は,時間講師として,Yが採用する変形労働時間制の適用はなく,原則は,Yから割り当てられた授業のみを担当するものであり,両者の間には,その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度に差がさると言わざるを得ない。
 また,本件の再雇用契約は,高年法9条1項2号の定年後の継続雇用制度に該当するものであり,定年後継続雇用者の賃金を定年退職前より引き下げることは,一般的に不合理であるとはいえない。
 よって,Yにおける定年退職後の再雇用契約と定年退職前の契約の相違は,労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して不合理であるとはいえず,労働契約法20条に違反するとは認められない。」

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