日本通運事件 ‐ 東京地判 令2・10・1 労働経済判例速報2438号3頁

【事案】
 雇止めされたXが,Yに対し,地位確認等を求めたもの。

【判断】
「労契法19条1号は,最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判判決・民集28巻5号927頁(東芝柳町工場事件)の判例法理を実定法としたものであることから,同号に該当するといえるためには,同判決の事案のように,有期労働契約の期間の満了ごとに厳密な更新処理がされない状況下で多数回の契約が更新され,これまで雇止めがされたこともないといった事情などから,当事者のいずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったと認められる場合であることを要し,そのことによって,期間満了ごとに当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態であると認められる場合であることを要するものと解される。」

「労契法19条2号は,最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁(日立メディコ事件)の判例法理を実定法としてものであるから,同号の要件に該当するか否かは,同判決や前記2(1)の判決のように,当該雇用の臨時性・常用性,更新の回数,雇用の通算期間,契約期間管理の状況,雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などの客観的事実を総合して判断されるべきものである。
 また,同号の「満了時」は,最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた労働契約の満了時までの間における全ての事情が総合的に勘案されることを示すものと解されるから,いったん労働者が雇用継続への合理的期待を抱いていたにもかかわらず,当該有期労働契約期間満了時に使用者が更新年数の上限を一方的に宣言したとしても,そのことのみをもって直ちに同号の該当性が否定されることにはならないと解される。」

「本件のように契約書に不更新条項等が記載され,これに対する同意が更新の条件となっている場合には,労働者としては署名を拒否して直ちに契約関係を終了させるか,署名して次期の期間満了時に契約関係を終了させるかの二者択一を迫られるため,労働者が不更新条項を含む契約書に署名押印する行為は,労働者が自由な意思に基づくものか一般的に疑問があり,契約更新時において労働者が置かれた前記の状況を考慮すれば,不更新条項等を含む契約書に署名押印する行為があることをもって,直ちに不更新条項等に対する承諾があり,合理的期待の放棄がされたと認めるべきではない。労働者が置かれた前記の状況からすれば,前記行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合に限り(最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決・民集70巻2号123頁(山梨県民信用組合事件)参照),労働者により更新に対する合理的な期待の放棄がされたと認めるべきである。」

「労働契約1から7までは,Q2事業所におけるQ3の商品運送業務をYが受注する限りにおいて継続する性質の雇用であったところ,Yが同業務を受注できず事業所を閉鎖して撤退するに至ったため,労働契約7の締結前に,Xが,Yの管理職から,YがQ3の商品運送業務を失注し事業所を閉鎖する見込みとなり,次期契約期間満了後の雇用継続がないことについて,個人面談を含めた複数回の説明を受け,Yに代わりQ3業務を受注した後継業者への移籍ができることなどを説明され,契約書にも不更新条項が設けられたことにより,労働契約7の締結の時点においては,それまでの契約期間通算5年1箇月,5回の更新がされたことによって生じるべき更新の合理的期待は,打ち消されてしまったといえる。そして,労働契約8締結時も,契約書に不更新条項が設けられ,管理職が,Xに対し,契約期間満了後は更新がないことについて説明書面を交付して改めて説明を行ったことにより,合理的な期待が生じる余地はなかったといえる。
 したがって,労働契約8の期間満了時において,Xが,Yとの有期労働契約が更新されるものと期待したとしても,その期待について合理的な理由があるとは認められない。」

「Xは,労契法18条の適用を免れる目的で不更新条項等を設けて行った本件雇止めが,労契法18条の無期転換の潜脱である旨主張するが,労契法18条は,有期契約の利用自体は許容しつつ,5年を超えたときに無期雇用へ移行させることで,有期契約の濫用的利用を抑制し,もって労働者の雇用の安定を図る趣旨の規定である。Xは,5年を超えて雇用されておらず,かつ労契法19条2号の適用により5年を超えて雇用されたことになるともいえないものであるから,Xについて,労契法18条の保護が及ぶことはなく,本件雇止めが同条の潜脱となるとはいえない。」