MIBプランニング事件 - 大阪地判 令2・10・19 労働判例1233号103頁

【事案】
 使用者であるXが,被用者であるYに対し,違約金等の支払を求めたもの。

【判断】
「1 雇用契約の債務不履行に基づく違約金請求について
(1) 請求原因(1),同(2)のうちXとYが雇用契約を締結したこと(〈証拠略〉)及びXの求めによりYが本件同意書(〈証拠略〉)に署名したこと,同(3),同(4)のうちYが本件始末書(〈証拠略〉)を作成したこと及びその時点でXがYに対する違約金200万円の請求を控えたことは当事者間に争いがない。
(2) しかるに,本件同意書は,使用者であるXが被用者であるYに対して私的交際を禁止し,これに違反した場合には違約金200万円を請求し,Yはこれを支払う旨合意するものであるところ,これは,労働契約の不履行について違約金を定めたり,損害賠償額を予定する契約を禁止したりすることを禁じた労働基準法16条に違反しており,無効である。
 また,人が交際するかどうか,誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって,その人の意思が最大限尊重されなければならないところ,本件同意書は,禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までを禁止対象に含んでいることや,その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている点において,被用者の自由ないし意思に対する介入が著しいといえるから,公序良俗に反し,無効というべきである。
 よって,抗弁(1),(2)はいずれも認められ,本件同意書は無効であるから,Yがこれに違反してXの従業員であるCと交際しても,債務不履行とはならない。
(3) XはYが本件始末書に違反したことを理由に違約金200万円の発生を主張するが(請求原因(5),(7)参照),これは本件同意書が有効であることを前提とするものである。
 しかし,本件同意書が無効であることは上記(2)で説示したとおりであるから,Yは本件同意書に基づく違約金200万円の支払義務を負わず,Xの主張はその前提を欠く。
(4) よって,XのYに対する雇用契約の債務不履行(本件同意書及び本件始末書の違反)に基づく損害賠償請求は理由がない。
2 不法行為に基づく損害賠償請求について
 Xは,YのCとの私的交際がXに対する不法行為となると主張する(請求原因(6))。
 しかし,上記1で認定説示したとおり,違約金の定めをもってYの私的交際を禁止した本件同意書は無効であって,YがCと交際することは本来的に自由である。そして,YのCとの交際について,男女間の愛情から生じたものでなくXに対して財産的損害を与える目的で行われたといった特段の事情はうかがえないから,Yに不法行為上の違法は存しない。
 よって,XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
3 結論
 以上によれば,Xの請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきである。よって,主文のとおり,判決する。」