公益財団法人グリーントラストうつのみや事件 ‐ 宇都宮地判 令2・6・10 労働法律旬報1968号58頁

【事案】
 有期契約労働者であるXが, Yによる更新拒絶は客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとして,Yに対し,地位確認等を求めたもの。

【判断】
「(1) まず,労契法19条1号の該当性について検討する。
 ア この点,労契法19条1号の該当性は,当該雇用の臨時性・常用性,更新の回数,雇用の通算期間,契約期間管理の状況,雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無等を総合考慮した上,当該有期労働契約が「期間の定めのない労働契約と実質上異ならない状態にある」と認められるか否かにより判断すべきものと解される。」

「(2) 次に労契法19条2号の該当性について検討する。
 ア この点,労契法19条2号の該当性は,同条1号の該当性と同様に,当該雇用の臨時性・常用性,更新の回数,雇用の通算期間,契約期間管理の状況,雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無等を総合的にしんしゃくし,使用者が当該労働契約を有期労働契約として目的の合理性の有無・程度と労働者の雇用継続に対する期待の合理性の有無・程度を相関的に検討した上,使用者において雇用期間を定めた趣旨・目的との関係で,なお労働者の雇用継続に対する期待を保護する必要性が高いものといえるか否かにより判断すべきものと解される。」

「3 争点(2)-仮に,本件労働契約が労契法19条各号のいずれかに該当するとして,その更新の申込みに対する本件雇止めは,同条柱書にいう「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとき」に当たるか。
 (1) Xは,本件雇止めは,労契法18条1項所定の期間の定めのない労働契約の締結申込権の発生を免れることを目的とするものであって,「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとき」に当たることは明らかである旨主張するので,以下,検討する。
 (2) この点,確かに,上記(1)によれば,本件雇止めは,宇都宮市の財政支援団体であるYが労契法18条所定の期間の定めのない労働契約の締結申込権の発生を回避する目的で行われたものということができる。しかし,労契法18条所定の「通算契約期間」が経過し,労働者に無期労働契約の締結申込権が発生するまでは,使用者には労働契約を更新しない自由が認められているのであって,上記「通算契約期間」の定めは,使用者のかかる自由まで否定するものではない。そうすると,使用者が上記無期労働契約の締結申込権を回避するため,上記「通算契約期間」内に当該有期労働契約の更新を拒絶したとしても,それ自体は格別不合理な行為ではない。
 しかし,上記2検討したとおり,上記アのとおり,本件労働契約⑥は有期労働契約であるが,労契法19条2号に該当し,労働者たるXの雇用継続に対する期待は合理的な理由に基づくものとして一定の範囲で法的に保護されたものであるから,特段の事情もなく,かかるXの合理的期待を否定することは,客観的にみて合理性を欠き,社会通念上も相当とは認められないものというべきである。
 (3) そこで上記特段の事情の有無について検討すると,この点,Yは,前記第2の3(2)【Yの主張】のとおり,Yの財政基盤は一般企業などとは異なり脆弱であって,およそ安定していないのか(ママ)実情であって,労契法18条1項により非常勤嘱託員を期間の定めのない労働契約の労働者として雇用を継続することは著しく困難である旨主張する。
 確かに,労契法19条各号により雇用の継続の期待が保護される有期労働契約においても人員整理的な雇止めが行われることがあり,上記1(4)アによれば,本件雇止めも,かかる人員整理的な雇止めとして実行されたものということができる。そうすると,その審査の在り方(厳格性)はともかく,本件雇止めにも,いわゆる整理解雇の法理が妥当するものというべきであるから,①人員整理の必要性,②使用者による解雇回避努力の有無・程度,③被解雇者の選定及び④その手続の妥当性を要素として総合考慮し,人員整理的雇止めとしての客観的合理性・社会的相当性が肯定される場合に限り,本件雇止めには上記特段の事情が認められるというべきである。
 上記1(1)エ及び(4)アとイによれば,非常勤嘱託の報酬(給与)は,宇都宮市からの補助金によって賄われていたところ,Yは,本件雇止めに当たって,宇都宮市の人事課からXにつき労契法18条1項が適用され,それまでの有期労働契約が期間の定めのない労働契約に転換されないよう人員整理を行うべき旨の指導を受けていたというのであるから,Yには上記人員整理のため本件雇止めを行う必要性が生じていたことは否定し難い。
 しかし,上記Xの業務実態は,本件各労働契約締結のかなり早い段階から,非常勤としての臨時的なものから基幹的業務に関する常用的なものへと変容し,その雇用期間の定めも,雇止めを容易にするだけの名目的なものになりつつあったというのであるから,①人員整理のための本件雇止めを行う必要性をそれほど大きく重視することは適当ではない上,②本件雇止め回避努力の有無・程度,③被雇止めの選定及び④その手続の妥当性に関する審査も,これを大きく緩和することは許されないものと解されるところ,上記1(4)で認定した経緯からみて,Yは,財政援助団体である宇都宮市(人事課)からの指導を唯々諾々と受け入れ,本件の人員整理的な雇止めを実行したものであって,その決定過程において本件雇止めを回避するための努力はもとより,Xを被雇止め者として選定することやその手続の妥当性について何らかの検討を加えた形跡は全く認められないのであるから,これらの事情を合わせ考慮すると,人員整理を目的として本件雇止めには,客観的な合理性はもとより社会的な相当性も認められず,したがって,本件雇止めに上記特段の事情は存在しないものというべきである。
 (4) 以上によれば,本件労働契約⑥の更新申込みに対する本件雇止めは,労契法19条柱書にいう「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとき」に当たるものというべきである。」