大島産業事件‐福岡高判 平31・3・26 労働経済判例速報2393号24頁

【事案】
 Xが,Yらに対し,未払賃金等(①900万円余と付加金等,②パワハラによる慰謝料150万円と弁護士費用等)の支払請求をし,Y社が,Xに対し,Xが業務指示を受けていた業務を無断で放棄したため損害を被ったとして損害賠償請求(200万円余)をしたもの。
 原審が,XによるYに対する未払賃金請求,Y3及びY社のパワハラによる慰謝料請求の一部を認容し,YによるXに対するXの無断欠勤によってY社に生じた損害の一部を認容したところ,Yらが敗訴部分を不服として控訴。

【判断】
「当裁判所も,原判決と同じく,①未払賃金請求は,937万0829円(割増賃金756万1092円とその他の賃金146万4269円に…確定遅延損害金34万5468円を加えた合計額)及びうち902万5361円に対する…支払済みまで年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,②パワハラに関する損害賠償請求は,110万円(慰謝料100万円と弁護士費用10万円の合計額)及びこれに対する遅延損害金の連帯支払(遅延損害金については一部連帯支払)を求める限度で理由があり,③付加金の請求については,494万8855円の限度で支払を命じるのが相当であり,④本件失踪…に関する損害賠償請求は,6万2587円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(…)と判断する。」

「Y3は,代表取締役退任後も,取締役に匹敵ないしこれを上回る権限(人事権や経営権)を有していたのであり,Y社内部においても,対外的にも代表権を有する者と認識されていたものである。
 Y3は,Y社がE専務及びF常務によって運営されており,経営の重要事項は同人らが中心に決めているから,運送業の経験のないY3に実質的な関与はできない旨供述するが,これはF常務らの運送業部門における専門的知見を尊重していることを述べたにすぎないと解され,Y3がY社の経営に実質的に関与していたことを否定するものとはいえない。」

「「就業規則の内容と異なる労働条件」の合意が,就業規則の定める労働条件に達しないものである場合,当該合意は無効とされるところ(労働契約法7条,12条),深夜の時間帯を中心として長距離運送業務に従事するXの勤務形態に照らせば,…Yら主張の出来高払制が本件就業規則等よりもXに有利であることを認めるに足りる証拠はないというべきであって,仮にYら主張の出来高払制の合意があったとしても,上記就業規則の最低基準効に反し無効であるといわざるを得ず,Xには本件就業規則等が適用される。」

「Yらは,当審において,ブログは従業員の懇親等を目的としており,正確性を要求されるものではなく,このようなブログの実態からすれば,Y社の従業員であるGの判断でブログを脚色して作成する可能性が十分ある,花火の発射及び投石は偶発的・突発的・自発的にしたものであるなどと主張するが,いずれも採用できない。…。なお,Yらは,Xに対し噴射された高圧洗浄機は型式が古く,これによる噴射は身体に危険を生じさせるものではなかった旨主張するが,仮に身体に危険を生じさせるものではなかったとしても,これがXに対する暴行に該当し,Xの人格を侵害する行為であることに変わりはなく,当裁判所の判断を左右するものではない。」

「Yらは,本件失踪…によってY社はHから路線…減便されたのであり,その損害との間には相当因果関係があることが明らかである旨主張する。
 しかし,Yらの主張する損害が発生したことを認めるに足りる証拠がないことや,仮に減便を強いられたとしても,これが全て本件失踪…によるものと認めるに足りる証拠がない以上,Yらの上記主張は採用できない。
 なお,Yらは,Y社はXが乗り捨てた車両を自社まで回送しなければならなかったのであり,主張している以上の損害も被っているとも主張するが,上記回送費用相当損害金を請求しているものではなく,また,これによって,上記減便による損害が認められるものでもない。」