オープンタイドジャパン事件‐東京地判 平14・8・9 労働判例836号94頁

【事案】
 Yに解雇されたXが、Yに対し、雇用契約上の地位確認等を求めたもの。

【判断】
「Xが、B社長、Cに次ぐ職位にある事業開発部長として、年俸1300万円で雇用されたこと、B社長が、Xの業務遂行状況をみて、事業開発部長としての業務能力及び適性の有無を判断し、これが良好であれば、Xを取締役にする予定であったこと、Xが、Yに雇用される前に数社を転職しており、その中に試用期間が設けられていたものがあったこと、Xが署名押印してYに提出した誓約書には試用期間の存在を前提とした記載がされており、Xがこれを提出した際、Yに対し誓約書の内容につき異議を述べなかったことが認められる。
 これらの事実によれば、XとYとの間で、Xの事業開発部長としての業務能力を把握し、その適性を判断するための試用期間を定める合意が成立したものと認められ、この合意は、合理的理由に基づくものとして、有効というべきである(・・・)。そして、Yがした本件解約告知は、雇用から2か月弱を経過してされたものであり、Xの業務能力を把握し、その適性を判断するための合理的な期間内にされたものといえる。
 ただし、本件解約告知が有効と認められるためには、上記試用期間の趣旨、目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認されるものであることが必要というべきである。」

「Xは、同業務について、関係者を訪問する等して、関連情報や参考資料を入手する等するとともに、韓国企業との間で連絡を取り合い、業務の進捗状況を報告する、相手方製品の情報入手に必要な秘密保持契約を締結する、相手企業の求めに応じて事業計画を提案する等、同業務の遂行に必要な事項を実施しており、これらが不適切であったと認めるに足りる的確な証拠はない。
 そうすると、Xによる訪問先の韓国企業への対応が不良であったと認めることはできない。」

「業務進捗表は、Yの週1、2回の定期ミーティングにおいて、各社員が各自の業務遂行状況を説明するための参考資料として作成されたものであり、社員によってはこれを作成しなかったり、作成しても簡単なメモ程度のものであったことが認められ、これらを併せ考えると、業務進捗表に関する・・・事実をもって、Xの業務遂行状況が不良であったと認めることはできない。」

「Xは、入社当初からO社の製品(ソリューション)の販売に従事することになっていたが、平成13年1月初旬になって、O社から受け取っていた顧客(同社及び他の代理店が既に接触している者)のリストをB社長又はCから入手したことから、その後に同顧客以外の者に対して営業活動を開始せざるを得なかったこと、Xは、本件解雇を告知されるまでに企業訪問を6回した他に、同製品販売に関する情報収集のために企業訪問を4回し、同解雇後に既に予定していた企業訪問を数社行ったこと、同製品の販売価格が約2700万円である上、顧客が限られたものであったこと、Xが、これらの企業訪問により得た情報をO社に伝え、同社との間で製品の内容、販売方法を再検討しようとしていたこと、Xが解雇された後、B社長が同製品販売の責任者となり、Yは、平成13年2月に20数名の社員を雇用したが、その後も同製品を販売することができなかったことが認められる。
 これらの事実によれば、Xにおける同製品の販売実績をもって、業務遂行状況が不良であったと認めることはできない。」

「Yは、Xが同製品の営業展開方針について提案しなかった旨主張するが、YがXに対しこのような提案をするよう命じ又は指示したことは、B社長の証言又は陳述の他に認めるに足りる証拠はない上、上記認定の事情に加え、同製品の販売業務について、XとDが、必要に応じて相談する等して個別に業務を遂行し、それぞれB社長に報告していたこと(・・・)に照らすと、Xが事業開発部長の職にあったことを考慮しても、Xが上記のような提案をしなかったことをもって、直ちにその業務遂行状況が不良であったと認めることはできない。」

「Xは、ブリッジング業務の一環として、S社の製品の販売に必要な覚書を締結するにあたり、契約内容をより有利にするために貢献したものと認められ、他方、Xが、同社製品の販売について、Y主張のような業務を遂行するよう命じ又は指示されたことを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、XがY主張のような業務をしなかったことをもって、その業務遂行状況が不良であったと認めることはできない。」

「これまで述べたXの業務遂行状況に照らすと、仮にXが事業開発部長としてY主張のような職責を果たすことを期待されていたとしても、Xが解雇されるまでの2か月弱の間にそのような職責を果たすことは困難であったというべきであり、また、その後に雇用を継続しても、Xがそのような職責を果たさなかったであろうと認めることもできない。
 したがって、XがY主張のような職責を果たさなかったことをもって、Xの業務遂行能力が不良であったと認めることはできない。」

「Xの業務能力又は業務遂行が著しく不良であったと認めることはできず、本件解約告知は、試用期間中の本採用拒否として、客観的に合理的な理由があるとか、社会通念上是認することができるものということはできない。
 したがって、本件解約告知は無効である。」