岩手県交通事件オープンタイドジャパン事件

October 21, 2015

日本ロール製造事件

日本ロール製造事件‐東京地判 平14・5・29 労働判例832号36頁

【事案】
 Xらが、Yのした旅費規程等の変更が無効であるとして変更前の債権の支払等を求めたもの。

【判断】
「「旅費規定(国内出張)」は、・・・就業規則44条に基づき規定され、・・・Y肩書住所地の本社、機械ロール部門及びパイプ部門の各事務所に備え置かれ、求めにより閲覧できるものであることから、労働基準法89条10号の「当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」に該当する同条の「就業規則」であり、Xらは、就業規則の存在及び内容を現実に知っているか否かにかかわりなく、当然にその適用を受け、XY間の労働契約の内容を構成するものというべきである(最大判昭和43年12月25日民集22巻13号、3459頁参照。)」

「営業服務規定は、・・・各営業担当部門に備え置かれ、求めにより閲覧できる状態にあったことから、労働基準法89条10号「当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」に該当するものとして、XY間の労働契約の内容となっていたものというべきである。」

「時間外勤務要領は、昭和38年の制定以来、目的として「一、所属長は自己の責任に所属する部課の工程作業要領の適切な管理を行い所定労働時間内の労働能率の向上を期し、無理な作業及び無駄な労働時間を減少するようにつとめなければならない。」と定められ、Yが各部署の所属長、担当課長、庶務係が従業員に時間外勤務を行わせるについて遵守すべき事項や手続の詳細を示した文書であり、各事業部門の事務所に保管されているが、従業員一般として周知する手段は特に講じられていなかったことが認められる。したがって、文書として従業員に対する周知性を欠く時間外勤務要領は、労働基準法89条の「就業規則」として労働契約の内容を構成するものとはいえない。
 しかし、時間外勤務要領7条1項に基づく取扱い、すなわち、「所定勤務時間を勤務し、時間外勤務要領5条に基づく手続を経て時間外勤務を行い、これが継続して3時間以上に及んだとき、又は、及ぶことが確定しているときには、1食当たり500円相当分の食事又は現金を支給する。」旨の取扱いは、平成元年の改訂後から平成11年3月20日までYとその従業員間において継続して行われており、Yがこの取扱いに反して時間外食事代を支給しないことはできず、かつ、この取扱いによる時間外食事代の支給についてYの従業員には周知されていたものといえるから(弁論の全趣旨)、時間外勤務要領7条1項に基づく取扱いは、少なくとも平成11年3月15日までには、黙示的にXY間の労働契約の内容となっていたものというべきである。
 Yは、時間外勤務要領はYの内部文書にすぎないから、これらによりYが従業員に対し権利義務を生じることはなく、従業員が何らかの利益を受けることがあっても、反射的利益に過ぎないとするが、内部文書として従業員に周知の措置がとられず、当該文書が「就業規則」として労働契約の内容を構成するものとはいえなくとも、前記のとおり文書に基づく取扱い自体が継続して行われ労働契約の内容となり、従業員の労働契約上の権利ないし法的利益となる場合があるから、Yの主張は採用できない。」

「夜勤手当要領は、Y労務部から機会ロール事業部門、パイプ事業部門の各責任者及び労務担当重役に対してのみ通知された内部的な連絡文書であり、平成2年5月11日作成当初は、当時の機械ロール事業部門、パイプ事業部門の各責任者及び労務担当重役の3名を対象に回覧された文書であったこと、Yの一般従業員には開示されたことはなかったことが認められる。したがって、文書として従業員に対する周知性を欠く夜勤手当要領は、労働基準法89条の「就業規則」として労働契約の内容を構成するものとはいえない。
 他方、夜勤手当要領に基づく取扱い、すなわち、交替勤務者で午後10時から午前5時までの間で2時間以上勤務した者に一回につき600円を支給するとの取扱いは、平成2年の実施当初から平成11年3月20日まで継続しており、この取扱いに反して夜勤手当を支給しないことはできず、かつ、この取扱いによる夜勤手当の支給についてはYの従業員には周知されていたものといえるから(弁論の全趣旨)、夜勤手当要領に基づく取扱いは、少なくとも平成11年3月15日までには、黙示的にXY間の労働契約の内容となっていたものというべきである。
 Yは、夜勤手当要領はYの内部文書にすぎないから、これらによりYが従業員に対し権利義務を生じることはなく、従業員が何らかの利益を受けることがあっても、反射的利益に過ぎないとするが、内部文書として従業員に開示されたことがなくとも、前記のとおり文書に基づく取扱い自体が労働契約の内容となり、従業員の労働契約上の権利ないし法的利益となる場合があるから、Yの主張は採用できない。」

「就業規則の変更によって労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集団的処理、特にその統一的、画一的決定を建前とする就業規則の性質上、当該条項が合理的なものである限り、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない(前掲最判参照)。そして、当該変更が合理的なものであるとは、当該変更が、その必要性及び内容の両面からみて、これによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。この合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況を総合考慮して判断すべきである。
 そして、このことは、労働条件の統一的、画一的決定を旨とする労働基準法89条の趣旨に照らし、就業規則以外の、当該事業場の労働者のすべてに適用される労働契約の内容となった定め又は取扱いを変更ないし廃止する場合にも当てはまるというべきである。」

「日帰り出張日当は、その経済的な目的としては、日帰り出張時には早朝に自宅を出たり、帰宅が遅くなったりして、昼食のみならず朝食及び夕食を外食とすることが多いため、その費用を補助することを主な目的として設けられたものと認められる。ただし、「日当」という名称が付され、外食をしたか、いかなる外食をしたか否かに関わらず一律に・・・金額が支給されるものであること、旅費規定には「帰着日の残業は帰社時間を以て始業と見なし、それ以後の実働7.5時間を超過せる時間に対しては残業手当を支給する。(注)日帰り出張は通常勤務と見なす。」(21条)とあり(〈証拠略〉)、日帰り出張時に所定労働時間を超過した場合でも時間外労働手当が支給されないことに照らすと、管理監督者以外の者に対する日帰り出張日当には、食事代補助の趣旨以外に時間外手当の全部又は一部を代償する性格も含まれていることが認められる。」

「労働契約は、労働者が労務を提供し、使用者はその対価を支払うものであるから(民法623条)、食事代は、営業接待、食事を伴う会議への出席等のように食事をすることが労務の提供そのものないし労務の提供の一部を構成する場合は格別として、そのような場合以外は、労務の提供のため必要な食事代であっても、労働者が本来負担すべき費用であるから(民法485条参照)、使用者が負担すべき業務上必要な経費とはいえず、その支給基準が明確である限りは、労働の対償として使用者が労働者に支払うものとして労働基準法11条「賃金」に該当するというべきである。しかるに、日帰り出張日当は、食事そのものが労務の提供そのものを構成する場合に支払われるものではなく、その支給基準は明確であるから、労働基準法11条「賃金」に該当すると解される。また、前記のとおり、日帰り出張日当に時間外手当の代償としての性格も含まれていることからしても「賃金」というべきである。」

「旅費規定・・・の変更は、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するものであるから、これを受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合には、その効力を生ずるものというべきである。」
「旅費規程・・・の変更は、日帰り出張日当の賃金という労働者(特に営業部門の労働者)にとって軽く見ることができない労働条件に関するものであるにもかかわらず、制定当時とかけ離れた現在の交通事情に合わせて変更するとの必要性を超えて支給条件を限定するもので、代償措置や関連する労働条件の改善も十分とはいえず、変更の合理性について組合及び従業員に対しての変更の必要性の説明も不十分で、これを受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものとは認められないから、無効と解すべきである。」

「外食時昼食補助は、・・・営業のため外出しているときに昼食をとった場合に支給されるものであること、その金額が400円とされていること、交通費の実費とともに出金伝票で精算され源泉徴収は行われないこと(〈証拠略〉によって認める。)、交通費は別に支給されるものであることから、営業のため外出時の食事では外食をする場合が多いのでその食事代の補助を目的とするものであると認められる。そして、外出時昼食補助は、食事をすることが労務の提供そのものを構成する場合に支給されるものではなく、その支給基準は明確であるから、労働基準法11条の「賃金」に該当すると解される(これに沿う行政解釈として昭和26年12月27日厚生労働省(当時は労働省)労働基準局長回答通達6126号)。」

「営業服務規定・・・の廃止は、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するものであるから、これを受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合には、その効力を生ずるものというべきである。」
「営業服務規定・・・の廃止は、営業担当の労働者にとって軽く見ることができない外出時昼食補助という賃金を廃止する内容であるところ、外食代の補助との経済的目的に照らしても廃止の必要性があるとはいえず、労働組合や従業員に対する変更の必要性の説明も不十分で、その廃止に合理性があるとはいえず、無効と解すべきである。」

「時間外食事代は、・・・時間外労働をした場合に500円相当の食事または現金を支給するというものであること、社員食堂が休止される前は社員食堂での定食代がおよそ500円であったことから(〈人証略〉)、時間外労働のための夕食を事業所でとる場合の食事代補助を目的とするものであると認められる。そして、時間外食事代は、食事をすることが労務の提供そのものを構成する場合以外に食事代として支給されるもので、その支給基準は明確であるから、労働基準法11条の「賃金」に該当すると解される。」

「時間外勤務要領・・・による取扱いの廃止は、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するものであるから、これを受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合には、その効力を生ずるものというべきである。」
「時間外勤務要領・・・に基づく取扱いの廃止は、労働者にとって軽く見ることができない時間外食事代という賃金を廃止する内容であるにもかかわらず、これを受忍することができるだけの高度の必要性に基づくものとはいえないから、無効と解すべきである。」

「夜勤手当は、・・・交替勤務者で午後10時から午前5時までの間で2時間以上勤務した場合に1回につき600円を支給するものであり、夜間勤務の対価として支払われるもので、その支給基準は明確であるから、労働基準法11条の「賃金」に該当すると解される。
 したがって、夜勤手当要領による取扱いの廃止は、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するものであるから、これを受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合には、その効力を生ずるものというべきである。」
「夜勤手当要領による取扱いの廃止は、営業担当の労働者にとって軽く見ることができない夜勤手当という賃金を廃止する内容であるにもかかわらず、これを受忍することができるだけの高度の必要性に基づくものとはいえず、労働組合や従業員に対する変更の必要性の説明も不十分でるから、無効と解すべきである。」


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