「使用者は、労働者の退職や転職を制限するための規制を設けることがある。まず、就業規則における「退職には会社の承認(許可)を要する」との規定(退職許可制)の効力が問題となる。この種の規定は、労働契約の合意解約には使用者の承諾を要するとの趣旨であれば当然のことを定めたものにすぎないが、労働者による一方的解約を制限するものであれば、解約の自由を不当に制約し、片面的強行法規である民法627条違反として無効と解される。そこで、一方的退職の意思表示後2週間を経過すれば、退職の効果が当然に生じ、労働契約が終了することになる。」(土田道夫『労働契約法』559頁,有斐閣,2008年)

「同規定によれば、退職には会社の許可を受けなければならないことになっているが(…)、このように解約申入れの効力発生を使用者の許可ないし承認にかからせることを許容すると、労働者は使用者の許可ないし承認がない限り退職できないことになり、労働者の解約の自由を制約する結果となること、…予告期間の延長の場合よりも顕著であるから、とくに法令上許容されているとみられる場合(…)を除いては、かかる規定は効力を有しないものというべく、同規定も、退職に会社の許可を要するとする部分は効力を有しないと解すべきである。」(高野メリヤス事件-昭51・10・29 東京地判)

「期間の定めのない雇用契約にあっては、労働者は、その雇用関係を解消する旨の一方的意思表示(退職申入れ)により、いつにても雇用関係を終了させることができるのであり、そして、この場合原則として、労働者の退職申入れ後2週間の経過によって終了するものである(民法627条1項)。…原告は…6月30日、被告に対し雇用契約の解約申入れをしているから、同年7月14日の経過をもって本件雇用契約は終了したものというべきである(なお、被告は、原告の退職申入れを承認せずに辞めないよう説得した旨主張するが、しかしながら、前記のとおり、労働者は一方的な退職申入れにより雇用関係を終了させることができるのであって、使用者の承諾を何ら必要とするものではないし、また仮に、被告に労働者の退職に使用者の承諾を要する旨の就業規則なり労働慣行などがあったとしても、これらは民法627条1項後段の法意に反し無効というべきであり、したがって、被告の右主張は失当である)。」(平和運送事件-昭58・11・22 大阪地判)

「被告の就業規則12条は、「退職を願出て、会社が承認したとき、従業員の身分を喪失する」旨規定していること、被告が原告らの退職申出を承認しなかったことが認められる。…右規定の趣旨及び適用範囲については、従業員が合意解約の申出をした場合は当然のことであるし、解約の申入をした場合でも民法627条2項所定の期間内に退職することを承認するについても問題がないが、それ以上に右解約予告期間経過後においてもなお解約の申入の効力発生を使用者の承認にかからしめる特約とするならば、もしこれを許容するときは、使用者の承認あるまで労働者は退職しえないことになり、労働者の解約の自由を制約することになるから、かかる趣旨の特約としては無効と解するのが相当である。」(日本高圧瓦斯工業事件-昭59・7・25 大阪地判)