September 26, 2012

高知放送事件-最2小判 昭52・1・31

【事案】
 Xは、Y編成局報道部勤務のアナウンサーであった。
 Xは、昭和42年2月22日から翌23日までの間ファックス担当放送記者Dと宿直勤務に従事したが、仮眠していたため、午前6時から10分間放送されるべき定時ラジオニュースを全く放送することができなかった(第1事故)。また、同年3月7日から翌8日にかけてファックス担当放送記者Eと宿直勤務に従事したが、寝過したため、午前6時からの定時ラジオニュースを約5分間放送することができなかった(第2事故)。
 Xは、第2事故については、上司に報告せず、後日これを知ったF部長から事故報告書の提出を求められ、事実と異なる事故報告書を提出した。
 Yは、Xの行為は就業規則所定の懲戒事由に該当するので懲戒解雇とすべきところ、再就職など将来を考慮して、普通解雇処分とした。
 Yの就業規則には、「従業員が次の各号の一に該当するときは、30日前に予告して解雇する。但し会社が必要とするときは平均賃金の30日分を支給して即時解雇する。ただし労働基準法の解雇制限該当者はこの限りでない。1、精神または身体の障害により業務に耐えられないとき。2、天災事変その他已むをえない事由のため事業の継続が不可能となったとき。3、その他、前各号に準ずる程度の已むをえない事由があるとき。」と定められていた。
 
 1審、原審ともに解雇を無効としたためYが上告。

【判断】
「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認できないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になるというべきである。本件においては、Xの起こした第1、第2事故は、定時放送を使命とするYの対外的信用を著しく失墜するものであり、また、Xが寝過しという同一態様に基づき特に2週間以内に2度も同様の事故を起こしたことは、アナウンサーとしての責任感に欠け、更に、第2事故においては卒直に事故の非を認めなかった等の点を考慮すると、Xに非がないということはできないが、他面、原審が確定した事実によれば、本件事故は、いずれもXの寝過しという過失行為によって発生したものであって、悪意ないし故意によるものではなく、また、通常は、ファックス担当者が先に起きアナウンサーを起こすことになっていたところ、本件第1、第2事故ともファックス担当者においても寝過し、定時にXを起こしてニュース原稿を手交しなかったのであり、事故発生につきXのみを責めるのは酷であること、Xは、第1事故については直ちに謝罪し、第2事故については起床後一刻も早くスタジオ入りすべく努力したこと、第1、第2事故とも寝過しによる放送の空白時間はさほど長時間とはいえないこと、Yにおいて早朝のニュース放送の万全を期すべき何らの措置も講じていなかったこと、事実と異なる事故報告書を提出した点についても、1階通路ドアの開閉状況にXの誤解があり、また短期間内に2度放送事故を起こし気後れしていたことを考えると、右の点を強く責めることはできないこと、Xはこれまで放送事故歴がなく、平素の勤務成績も別段悪くないこと、Yにおいては従前放送事故を理由に解雇された事例はなかったこと、第2事故についても結局は自己の非を認めて謝罪の意を表明していること、等の事実があるというのであって、右のような事情のもとにおいて、Xに対し解雇をもってのぞむことは、いささか苛酷にすぎ、合理性を欠くうらみなしとせず、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできないと考えられる余地がある。したがって、本件解雇の意思表示を解雇権の濫用として無効とした原審の判断は、結局、正当と認められる。論旨は、ひっきょう、右判示と異なる見解に立って原判決を非難するものであって、採用することができない。」

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