辞職とは、労働者が、使用者に対し、当事者間の雇用契約を一方的に解約する旨の意思表示をすることをいう。

民法627条は、①解約の申入れの日から2週間経過後に終了する(1項)、②期間によって報酬を定めた場合は、解約の申入れ(当期の前半にしなければならない)は次期以後についてできる(2項)、③6ヶ月以上の期間によって報酬を定めた場合は、解約の申入れは3ヶ月前にしなければならない(3項)、旨を規定している。

「期間の定めのない雇用契約においては、労働者は2週間の予告期間を置けば「いつでも」(すなわち、理由を要せず)契約を解約できる(民627条1項)。ただし、毎月1回払いの純然たる月給制(遅刻、欠勤による賃金控除なし)の場合は、解約は翌月以降に対してのみなすことができ、しかも当月の前半においてその予告をなすことを要する(同条2項)。」(菅野和夫『労働法〔第9版〕』459頁〔弘文堂,2010年〕)

「期間の定めのない労働契約において、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる(雇用は、解約の申入れの日から2週間の経過によって終了する)との規定(民法627条1項)は、労働者からする解約(任意退職)については、片面的強行規定であり、退職の事由をこれより厳しくする合意は無効である。」(西谷敏『労働法』73頁〔日本評論社,2008年〕)

「使用者は、退職の予告期間を民法627条1項の2週間より延長する規定を設けることもある。この種の規定についても、民法627条を片面的強行法規と解して延長規定の効力を否定するのが通説・裁判例である。これに対しては、解雇に関する労基法20条とのバランス上、1か月までの延長ならば有効と説く見解もありうるが(…)、退職の自由が職業選択の自由と密接な関係にあることを考えると、通説・裁判例が妥当と解される。」(土田道夫『労働契約法』559-560頁〔有斐閣,2008年〕)

「法は、労働者が労働契約から脱することを欲する場合にこれを制限する手段となり得るものを極力排斥して労働者の解約の自由を保障しようとしているものとみられ、このような観点からみるときは、民法627条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である。・・・規定によれば、退職には会社の許可を得なければならないことになっているが(・・・)、このように解約申入れの効力発生を使用者の許可ないし承認にかからせることを許容すると、労働者は使用者の許可ないし承認がない限り退職できないことになり、労働者の解約の自由を制約する結果となること、前記の予告期間の延長の場合よりも顕著であるから、・・・かかる規定は効力を有しないものというべく、同規定も、退職に会社の許可を要するとする部分は効力を有しないと解すべきである。」(高野メリヤス事件-東京地判 昭51・10・29 判時841号102頁)

「期間の定めのない雇用契約にあっては、労働者は、その雇用関係を解消する旨の一方的意思表示(退職申入れ)により、いつにても雇用関係を終了させることができるのであり、そして、この場合原則として、労働者の退職申入れ後2週間の経過によって終了するものである(民法627条1項)。・・・(なお、Yは、Xの退職申入れを承認せずに辞めないよう説得した旨主張するが、しかしながら、前記のとおり、労働者は一方的な退職申入れにより雇用関係を終了させることができるのであって、使用者の承認を何ら必要とするものではないし、また仮に、Yに労働者の退職に使用者の承諾を要する旨の就業規則なり労働慣行などがあったとしても、これらは民法627条1項後段の法意に反し無効というべきであり、したがって、Yの右主張は失当である)。」(平和運送事件-大阪地判 昭58・11・22 労経速1188号3頁)

「Yの就業規則…条は、「退職を願出て、会社が承認したとき、従業員の身分を喪失する」旨規定していること、Yが原告らの退職申出を承認しなかったことが認められる。・・・右規定の趣旨及び適用範囲については、従業員が合意解約の申し出をした場合は当然のことであるし、解約の申入れをした場合でも民法627条2項所定の期間内に退職することを承認するについても問題ないが、それ以上に右解約予告期間経過後においてもなお解約の申入れの効力発生を使用者の承認にかからしめる特約とするならば、もしこれを許容するときは、使用者の承認あるまで労働者は退職しえないことになり、労働者の解約の自由を制約することになるから、かかる趣旨の特約としては無効と解するのが相当である。」(日本高圧瓦斯工業事件-大阪地判 昭59・7・25 労判451号64頁)