陸上自衛隊八戸車両整備工場事件-最3小判 昭50・2・25

【事案】
 Xらの子は、自衛隊駐屯地で車両整備に従事していたところ、後進してきた大型自動車の後輪に頭部を轢かれて死亡した。
 Xらは、死亡の事実を知った時から4年3か月ほど経過後、Yに対し、損害賠償を求めて提起した。
 1審は、不法行為による損害賠償請求権の時効が成立しているとして請求を棄却し、2審は、Xらが追加主張したYの使用者としての安全配慮義務違反(債務不履行)による責任をも棄却したため、上告した。

【判断】
「思うに、国と国家公務員(以下「公務員」という。)との間における主要な義務として、法は公務員が職務に専念すべき義務(・・・)並びに法令及び上司の命令に従うべき義務(・・・)を負い、国がこれに対応して公務員に対し給与支払義務(・・・)を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解すべきである。もとより、右の安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種、地位及び安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものであり、自衛隊員の場合にあっては、更に当該勤務が通常の作業時、訓練時、防衛時(・・・)、治安出動時(・・・)又は災害派遣時(・・・)のいずれにおけるものであるか等によっても異なりうべきものであるが、国が、不法行為規範のもとにおいて私人に対しその生命、健康等を保護すべき義務を負っているほかは、いかなる場合においても公務員に対し安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。けだし、右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであって、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負い、これを尽くすことが必要不可欠であり、また、国家公務員法・・・及びこれに基づく国家公務員災害補償法並びに・・・等の災害補償制度も国が公務員に対し安全配慮義務を負うことを当然の前提とし、この義務が尽くされたとしてもなお発生すべき公務災害に対処するために設けられたものと解されるからである。」
「国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、公平の理念に基づき被害者に生じた損害の公正な填補を目的とする点において、私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではないから、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法30条所定の5年と解すべきではなく、民法167条1項により10年とすべきである。」

 │  このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote  (07:10)

記事検索
カテゴリー
月別アーカイブ