労契法2条2項は、『この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。』と規定している。

「法第2条第2項の「使用者」とは、「労働者」と相対する労働契約の締結当事者であり、「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」をいうものであること。したがって、個人企業の場合はその企業主個人を、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものをいうものであること。これは、労働基準法第10条の「事業主」に相当するものであり、同条の「使用者」より狭い概念であること。」(平20・1・23 基発第0123004号)

(労基法では使用者を「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」としている。)

「刑罰や行政取締を規制手段とする労働基準法が、実際に使用者としての権限を行使する者を規制対象ないし責任主体とする趣旨に基づいて使用者の概念を定めたのに対して、労働契約法は、労働契約をめぐる権利義務関係を定めた法律であるから、権利義務の主体としての契約当事者である事業主(雇用主)のみを使用者としたものと考えられる。」(荒木尚志・菅野和夫・山川隆一『詳説 労働契約法』71頁、弘文堂、2008年)

事業主(雇用主)と形式上は労働契約関係の当事者と無関係であっても、当該関係に実態として「使用者」と同一視できるような影響力を及ぼしている場合においては、第三者が使用者となることもある。

「労働契約上の責任を負う主体としての使用者(労働契約上の「使用者」)は、当該労働者が労働契約を締結している相手方である企業(一般に個人企業の場合は企業主個人、法人企業の場合は法人)である。しかし、実質的に企業を支配している者が法形式を悪用して契約責任を回避しようとする場合など、契約上の一方当事者でない者に使用者としての責任を追及すべき場合もある(「使用者」概念の拡張)。」(水町勇一郎『労働法〔第3版〕』81頁、有斐閣、2010年』

「形式上契約の一方当事者でない者の使用者性が問題となることがある(「使用者概念の外部的拡張」ともいわれる)。具体的に問題となるのは、社外労働者の派遣受入れや出向関係のように三者間労働関係の場合、別会社を立ち上げて、従前の会社の使用者としての責任を遮断しようとする場合、親子会社関係のように、直接の契約上の使用者を別法人が支配し、子会社の労働関係に影響力を及ぼしているような場合等である。これらの労働契約の当事者でない者が使用者と認められる理論構成には、黙示の労働契約の成立の認定と法人格否認の法理とがある。」(荒木尚志『労働法』57頁、有斐閣、2009年)