労組法は、労働者については、『この法律で「労働者」とは、・・・者をいう。』というような定義規定があるが、使用者については、『この法律で「使用者」とは・・・』というような定義規定はない。

労組法上の使用者が問題となるのは、不当労働行為(法7条)に係る場合である。

労組法7条は、使用者が、①労働者が組合員であること、組合加入、組合結成、組合の正当行為を理由に不利益取扱、組合を脱退すること・加入しないことを雇用条件とすること、②正当な理由のない団体交渉拒否、③組合活動の支配介入、経費援助、④労働委員会への申立てを理由とする不利益取扱、を禁止している。

「不当労働行為救済制度の目的は、労働者が団体交渉その他の団体行動のために労働組合を組織し運営することを擁護すること、ならびに労働協約の締結を主目的として団体交渉を助成することにあるので(労組1条1項参照)、不当労働行為禁止規定によって規制を受ける「使用者」とは、労組法がこのように助成しようとする団体的労使関係上の一方当事者である使用者を意味する。そして、この団体的労使関係は労働者の労働関係上の諸利益についての交渉を中心として展開されるものなので、労働契約関係またはそれに隣接ないし近似した関係をその基盤として必要とする。」(菅野和夫『労働法〔第9版〕』668頁、弘文堂、2010年)

労働契約の相手方である使用者の他(企業外)であっても、労組法上の使用者(ときには部分的であったも)となる場合がある。

「一般的にいえば、不当労働行為法上の「使用者」とは、「労働関係に対して、不当労働行為法の適用を必要とするほどの実質的な支配力ないしは影響力を及ぼしうる地位にある者」をいうべきである。問題となるのは、他企業の労働力を利用する企業、過去もしくは将来の使用者、そして他企業を支配する企業であり、「使用者」の範囲は、それぞれの類型に即して判断しなければならない。」(西谷敏『労働法』484頁、日本評論社、2008年)

「一般に使用者とは、労働契約上の雇用主をいうものであるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主同条の『使用者』に当たるものと解するのが相当である。」
「Xは、実質的にみて、請負3社から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたのであり、右従業員の基本的な労働条件等について、雇用主である請負3社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったものというべきであるから、その限りにおいて、労働組合法7条にいう『使用者』にあたるものと解するのが相当である。」(朝日放送事件-最三小判 平7・2・28)