健保法・厚年法は「適用事業に使用される者」を被保険者とする旨規定(健保法3条1項・厚年法9条)しているが、『使用される者』か否かは、その形式にとらわれることなく、「事実上の使用関係」(「使用従属関係」までは要求されない)の有無によって判断される。

「法人の代表者又は業務執行者で法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする。」(昭24・7・28 保発74号)

「請負制度が労務供給上の一方法又は賃金支払の一形態と認められる場合においては請負業者は事業主として取り扱わない。」(昭10・3・18 保発181号)

「事実上の使用関係があれば足り、事業主との間の法律上の雇用関係の存否は、使用関係を認定する参考となるにすぎない。したがって、単に名目的な雇用関係があっても、事実上の使用関係がない場合は使用される者とはならない。」(法研『健康保険法の解釈と運用』129頁、2005年)

「事業所に使用される者とは、必ずしも事業主との間に法律上の雇用関係が存在することを必要とせず、従業員が事実上労務を提供し、これに対して事業主が一定の報酬を支払う事実上の使用関係があればよい。」(法研『厚生年金保険法解説』456頁、2002年)

「健康保険法、厚生年金保険法に定める保険給付はいずれも労基法、労災保険法に定める災害補償とその対象を異にし、専ら労働者及び被扶養者または遺族の生活の安定を図り、福祉の向上に寄与することを目的としているのであって、憲法第25条の『①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。』という規定に基づき制定されたものと解すべく、健康保険法、厚生年金保険法のもとにおいては労使間の実勢上の差異を考慮すべき必要がなく、右各法で定める『事業所に使用せられる者』のなかに法人の代表者をも含め、右代表者をして労基法及び労災保険法上の『労働者』と区別することなく、ともに右各法所定の保険制度を利用させることこそ、前記憲法の条項の趣旨にかなう」(岡山製パン事件-広島高裁岡山支判 昭38・9・23)

「Xは、I設計の取締役たる地位にあったものであって、それもいわゆる社外役員である名目的取締役や非常勤の取締役であったものではなく、・・・取締役たる職務を行おうとすると同時に、総務のほか、主として営業面の業務を担当し、常時出勤して同会社に対する労務を提供し、給料、手当等の報酬の支払を受けていたものであり、しかも、同会社の人事、労務面の管理下にあってその勤務をしていたものであるから、I設計とXの間には・・・以降は少なくとも事実上の使用関係が存在したものというべきであり、したがって、結局Xは、健康保険法・・・に規定する「事業所に使用セラルル者」に該当する」(大阪府建築健康保険組合事件-大阪高判 昭55・11・21)

「健康保険法が強制加入主義をとったのは危険度の高い者のみが加入する逆選択を防止するとともに、労働者の生活の安定を目的とした同法の趣旨に鑑み、できる限り広範囲の労働者に同保険制度の利益を及ぼすためであると解されることからすれば、右にいう『使用関係』の有無を判断するに当たっては、一方では形式的な雇用契約の有無にとらわれることなく、実質的に事業主に労務又は役務を提供しその対価を得ている者であれば、使用関係を肯定すべきであるし、他方形式上雇用契約が存在しても、右のような実質を備えていない者については、同法が保障の対償とした労働者の範疇に入らず、その使用関係は否定されるものと解するのが相当である(このような者に対する保障は国民健康保険に委ねられていると解される。)。」(壹光堂事件-名古屋地判 昭60・9・4)