労災保険法上の労働者とは、労基法(9条)上の労働者であり、事業主については、「法人、団体、組合の代表者又は執行機関たる者の如く、事業主体との関係において使用従属の関係に立たない者は労働者ではない。」(昭23・1・9 基発第14号)、「法人の重役等で業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて法第9条に規定する労働者である。」(昭23・3・17 基発第461号)とされる。

雇用保険法上の「適用事業に雇用される労働者」(法4条)とは、「事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活している者及び事業主に雇用されることによって生活しようとする者で現在その意に反して就業することができないもの」(行政手引20004)であり、事業主については、「株式会社の取締役は、原則として、被保険者としない。取締役であって同時に会社の部長、支店長、工場長等従業員としての身分を有する者は、報酬支払等の面からみて労働者的性格の強い者であって、雇用関係があると認められるものに限り被保険者となる。」(行政手引20351)、「代表取締役は被保険者とならない。」(同手引)、農業協同組合、漁業協同組合、その他の法人、法人格のない社団、財団の役員等は「雇用関係が明らかでない限り被保険者とならない。」(同手引)とされる。

健康保険法上の「適用事業所に使用される者」(法3条)は、「会社等法人、監事、取締役、代表社員等のいわゆる代表機関は、民法又は商法の規定においては、法人に使用されている者とは解されないが、健康保険法の適用については、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、その法人に使用されるものとして被保険者の資格を取得することになる。なお、法人でない社団又は組合の総裁、会長等その団体の理事の地位にある者も同様の取扱いとする。」(昭24・7・28 保発第74号)とされる。

厚生年金保険法上の「適用事業所に使用される者」(法9条)は、「常勤の会社重役が、会社の機関たると同時に、他面において部長、課長、支店長、支配人、工場長等の使用関係にある場合は、被保険者とする。」(昭19・6・29 保受第9号)、「法人の理事、監事、取締役、代表社員及び無限責任社員等法人の代表者又は業務執行者であって、他面その法人の事務の一部を担任し、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、被保険者とする。なお、非法人の社団又は組合の総裁、会長及び組合長等その団体の理事者の地位にある者、又は地方公共団体の業務執行者についても同様の取扱とする。」(昭24・7・28 保発第74号)とされる。

労働保険ではその対象とならない事業主を社会保険ではその対象とすることについて、「労基法はもとより、同法に定める業務上の災害補償義務を代行とすることを目的とする労災保険法は、いずれも憲法第27条第2項の…規定に基づいて制定され、労使間の実勢上の差異がある労働関係において、現実に労働生活に従事する労働者につき、その労働条件として業務上の災害の補償を受けうべきことを法定し、労働者及びその遺族の生活の安定を期しているものであるところ、健康保険法は、保険者が被保険者もしくはその被扶養者の業務外の事由による疾病、負傷、死亡または分娩について保険給付を行うものであって、労働生活に直接関係のない事項を災害補償の対象とし、厚生年金保険法は業務上業務外の区別なくひろく被保険者の老齢、廃疾、死亡、または脱退の場合に、現実に労働生活に従事しない被保険者及びその遺族に保険給付を行うものである。右のとおり健康保険法、厚生年金保険法に定める保険給付は、いずれも労基法、労災保険法に定める災害補償とその対象を異にし、専ら労働者及びその被扶養者または遺族の生活の安定を図り、福祉の向上に寄与することを目的としているのであって、憲法第25条の…規定に基づき制定されたものと解すべく、健康保険法、厚生年金保険法のもとにおいては労使間の実勢上の差異を考慮すべき必要がなく、右各法で定める「事業所に使用せられる者」のなかに法人の代表者をも含め、右代表者をして労基法及び労災保険法上の「労働者」と区別することなく、ともに各法所定の保険制度を利用させることこそ、前記憲法の条項の趣旨にかなう所以である」(岡山製パン事件-昭38・9・23 広島高裁岡山支部 「判例時報」362号70頁) といった判例がある。

なお、社会保険においては、個人事業で常時5人未満の従業員を使用するもの、常時5人以上の従業員を使用するもののうち一定の個人事業は、厚生労働大臣の認可を受けて適用事業となる(健保法31条・厚年法6条3項)が、この場合、個人経営の事業の事業主は、「使用される者」(健保法3条・厚年法9条)に該当しないため、被保険者とはならない。(国保に加入)