「請負契約による下請負人は、当該業務を自己の業務として注文主から独立して処理するものである限り、たとえ本人が労務に従事することがあっても労働者となることはない。」(昭63・3・14 基発150号)ので、「労働基準法上の労働者」を対象とする労災保険法、「雇用される労働者」を対象とする雇用保険法は適用外となる。但し、請負が形式的なものであって、実態として使用従属関係が認められる場合は適用の余地が生じる。

労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭60・12・19)は、その基準として、使用従属性(仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、時間的場所的拘束性の有無、代替性の有無)、事業者性(機械・器具の負担、報酬額、損害に対する危険負担)、専属性(他社の従事の可否、固定給(生活保障給)の有無)、その他(採用・委託経緯、源泉徴収の有無、労働保険適用の有無、服務規律適用の有無、退職金・福利厚生適用の有無)等を挙げる。

雇用保険法の行政通達は「法における雇用関係とは、民法第623条の規定による雇用関係のみでなく、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働をし、その提供した労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係をいう。」(行政手引20004)としている。

「上告人は、業務用機材…を所有し、自己の危険と計算の下に…業務に従事していたものである上、…会社は、…業務の性質上当然に必要とされる…指示をしていた以外には、…業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的・場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、…会社の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りない…。そして、報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。それであれば、…専属的に…業務に携わっており、…指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、…事実上決定されることになること、…運賃は…低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。」(横浜南労基署長(旭紙業)事件-平8・11・28 最1小判)

「上告人は、…はもとより、…の指揮監督の下に労務を提供していたものと評価することはできず、…から上告人に支払われた報酬は、仕事の完成に対して支払われたものであって、労務の提供の対価として支払われたものとみることは困難であり、上告人の自己使用の道具の持込み使用状況、…に対する専属性の程度等に照らしても、上告人は労働基準法上の労働者に該当せず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。」(藤沢労基署長(大工負傷)事件-平19・6・28 最1小判 「労働判例」940号11頁)

「労災保険法にいう労働者は、労基法に定める労働者と同義であり(最高裁平成17年(行ヒ)第145号同19年6月28日第一小法廷判決・裁判集民事224号701頁参照)、同法9条は、労働者とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定めているから、労働者に該当するか否かについては、使用者の指揮監督の下に労務を提供し、使用者からその労務の対償としての報酬が支払われているかを基準として判断すべきであると解される。そして、上記のうち、労務の提供が他人の指揮監督下において行われているかどうかに関しては、具体的には、業務従事の指示等の有無、勤務場所及び勤務時間が指定され管理されているかどうか、労務提供につき代替性の有無等の事情を総合的に考慮して判断されるべきものといえる。」(国・西脇労基署長(加西市シルバー人材センター)事件-平22・9・17 神戸地判 「労働判例」1015号34頁)

「①一般従業員と異なった採用手続きがとられていること、②会社の組織機構に組み入れられ、その指揮監督を受ける関係になかったこと、③就業規則の適用がなく別格待遇の扱いであったこと、④月12日程度の出社は、業務命令によるものではなく、出退社は自由であったこと、⑤報酬の額が固定しておらず出社日数により変化していたこと、⑥報酬は謝礼という名目で「雑費」から支出され、これを被控訴人は事業所得としていたこと等の事実から、本件労務供給契約は(準)委任契約に基づくものと認められるのが相当であり、被控訴人は、雇用保険法でいう「雇用される労働者」には当らない。」(所沢職安所長(飯能光機製作所)事件-昭59・2・29 東京高判)

「雇用保険法の被保険者は「適用事業に雇用される労働者であって、第6条各号に掲げる者以外のもの」(同法4条1項)をいい、同法における労働者というためには、事業主との間に雇用関係が存することが必要であるところ、この雇用関係とは、民法623条による雇傭契約が締結されている場合にとどまらず、①労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し(指揮監督下の労働)、②その労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準じるものの支払を受け(労務対償性)ている関係をいうものと解すべきである。本件におけるような労務提供の場合、上記①指揮命令下の労働であるか否かの判断は、仕事の依頼や業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、場所的時間的拘束性の有無、代替性の有無を、また、②の労務対償性については報酬の性格を検討し、さらに、当該労務提供者の事業者性の有無、専属性の程度、その他の事情をも総合考慮して判断するのが相当である。」(池袋職安所長(アンカー工業)事件-平16・7・15 東京地判 「労働判例」880号100頁)

健康保険法、厚生年金保険法にあっても「請負業者がその事業を自己の統制管理及び計算の下に遂行し企業上独立している場合は、請負業者を事業主として取り扱うべきものであるが、請負制度が労務供給上の一方法又は賃金支払の一形態と認められる場合においては請負業者は事業主として取り扱わない。」(昭10・3・18 保発181号)とされ、実態のない形式だけの請負の場合は、各法の適用範囲となる。