インタアクト事件‐東京地判 令元・9・27 労働経済判例速報2409号13頁

【事案】
 Xが,Yに対し,賞与・退職金の支給等を求めたもの。

【判断】
「(1) 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
 ア Xは,X代理人を通じて,退職通知書の到達後1か月を経過する日をもって退職する旨,及び,平成28年11月20日から退職日までの間は有給休暇を取得する旨等が記載された平成28年11月10日付け内容証明郵便をYに送り,同書面は同月11日に到達した。
 その後,Xは,X代理人を通じて,Yとの間で,退職等に関するやりとりを行い,平成28年12月22日付け書類送付状とともに,退職日を平成28年12月9日とする退職者確認表,退職時誓約書,退職所得申告書等をYに送付した。
 イ Yは,平成28年12月12日,平成28年度冬期賞与支給日を平成28年12月13日に設定し,Yの従業員に通知した。
 ウ Yにおける平成22年から平成27年までの間の冬期賞与支給日は,平成22年12月10日,平成23年12月7日,平成24年12月10日,平成25年12月6日,平成26年12月8日,平成27年12月11日であった。
 (2) 上記認定事実によれば,XがYを退職したのが平成28年12月9日であると認められるのに対し,平成28年度冬期賞与支給日が同月13日と設定されていることから,Xは,「支給日に在籍している社員」には該当しない。
 また,上記認定事実のとおり,Yにおける冬季賞与支給日は,必ずしも12月9日以前とされていたわけではなく,その他に,YがXを支給日在籍社員として取り扱わないことが権利濫用に該当することを裏付ける事実を認めるに足りる証拠はない。
 したがって,この点に関するXの主張には理由がなく,Xは,平成28年度冬期賞与を請求できる権利を有しない。」

「(3) 退職金が賃金の後払い的性格を有しており,労基法上の賃金に該当すると解されることからすれば,退職金を不支給とすることができるのは,労働者の勤労の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しい背信行為があった場合に限られると解すべきである。
 これを本件についてみると,…Yが本件背信行為として主張する者の多くは,そもそも懲戒解雇事由に該当しないものである上,仮に懲戒解雇事由に該当しうるものが存在するとしても(…)その内容はXが担当していた業務遂行に関する問題であってYの組織維持に直接影響するものであるとか刑事処罰の対象になるといった性質のものではなく,これについてYが具体的な改善指導や処分を行ったことがないばかりか,Yにおいても業務フローやマニュアルの作成といった従業員の執務体制や執務環境に関する適切な対応を行っていなかったのであり,また,…Yに具体的な損害が生じたとはみとめられないのであって,これらの点に,Yの退職金規程の内容からすれば,Yにおける退職金の基本的な性質が賃金であると解されること,XとDとの関係を推認させる客観的な証拠である携帯電話の着信履歴,写真,LINE履歴及び会話の録音内容によれば,DとXがある時期Yにおける上司と部下の関係を超えて私的関係においても緊密な関係を有していたが,XがYを退職する直前にはDとXとの関係に軋轢が生じていたことがうかがわれるところであり(なお,Yの従業員が作成した陳述書にはXとDの関係に何ら問題がなかった旨の記載があり,また,Y申請の証人は同趣旨の証言を行うが,上記客観証拠の内容に照らすと,それらの証拠をにわかに採用することはできない。),Xにおいて対面による引継行為を敬遠したことには一定の理由があると解され,Xにおいて対面による引継行為に代えてX代理人を通じた書面による引継行為を行っていることなどの本件における全事情を総合考慮すると,Xについて,Yにおける勤労の功を抹消してしまうほどの著しい背信行為があったとは評価できない。
 したがって,Yは,Xに対して,退職金規程に従って退職金を支払う義務を負う。」