ホームケア事件 ‐ 横浜地判 令2・3・26 労働判例1236号91頁

【事案】
 Xが,Yに対し,未払賃金等の支払を求めたもの。

【判断】
「本件雇用契約における所定労働日数に係る合意は,上記各契約書の記載のみにとらわれることなく,本件請求期間より前のXの勤務実態等の事情も踏まえて,契約当事者の意思を合理的に解釈して認定するのが相当である。
(3) そこで検討すると,証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,Xは,原審の本人尋問において,裁判官の「あなたは何曜日に出勤することが多かったんですか。」との質問に対し,「私は月火水木と。金曜日は忙しかったら出るときもありました。この4日間だけは間違いなく出ていました。」,「これは私が他のこともやることがあるので,それで4日ぐらいでよろしいですかということを,お話をしたんですけどね。」と供述し,Y代理人の「毎日行くんですか。」との質問に対しても,「出番の日は,4日間の日は私は行きます。きちっと8時。それで朝,自宅にBさんから電話が,今日は何時頃に来てくださいとかいって,電話が入るときが多いんです。それで入らないときは,今日は誰々さんがお休みするから,申し訳ないけど休んでくださいという電話もしょっちゅうありました。」と供述したことが認められる。
 Xの上記供述は,X本人尋問を通じて一貫しており,その内容に特段,不合理な点も見当たらないから,信用することができる。そして,Xの使用者であり,出勤簿等をもってXの出退勤を管理していたことがうかがわれるYが,平成29年以前のXの勤務実態について立証しないこと(当審第4回口頭弁論調書)を踏まえると,Xは,本件請求期間より前である平成29年以前は,おおむね4日勤務していたものと推認されるから,本件雇用契約における所定労働日数に係る合意は,契約当事者の意思を合理的に解釈すれば,週4日であったと認めるのが相当である。」

「(1) 前記1のとおり,本件雇用契約において,週の所定労働日数は4日とされていたものであるが,それにもかかわらず,平成30年3月から同年7月までの間,Xが現実に送迎業務に従事した日は週4日に満たず,所定労働日のうちXが就労しなかった日が存在することになる。
(2) 前記(1)の状況が生じた理由の一つとして,Xは,Xが現実に送迎業務に従事しなかったのは,Yにおいて,Xに対し,仕事がないと告げ,送迎計画表に入れなかったことによる旨主張し,原審の本人尋問においても「今日は誰々さんがお休みするから,申し訳ないけど休んでくださいという電話もしょっちゅうありました。」などとこれに沿う供述をする(前記1(3))。そして,Yも,YがXを車椅子の利用者等の送迎に配置しなかったことを前提に,それがX側の原因に基づくものである旨主張することを踏まえると,Xが現実に送迎業務に従事しなかった直接の理由は,YがXを送迎計画表に入れなかったことであるものと認められる。」

「以上を前提に,Yの上記主張について検討すると,証拠(乙21,36)及び弁論の全趣旨によれば,Xの出勤日は,Yにおいて,利用者の送迎計画表を作成することによって決定されることが認められるところ,Xを送迎計画表に入れるかどうかは,Yの判断に委ねられているのであり,各日の送迎計画表に入らなかった日については,当該日の送迎業務に従事することを命じられておらず,これを受けた労務の提供の有無を観念する局面にいたっていなかったというべきであるから,Xが就労しなかったことは,基本的にはYの責に帰すべき事由によるものであったと解するのが相当である。」

「したがって,YがXを送迎計画表に入れなかった日については,Xが就労しなかったことは,Yの責に帰すべき事由によるものと認めるのが相当であって,Xは,Yに対する賃金請求権を失うものではない。」