ネギシ事件‐東京地判 平28・3・22 労働法律旬報1888号73頁、東京高判 平28・11・24 労働法律旬報1888号66頁

【事案】
 Xが、YがしたXに対する解雇の意思表示は無効である旨主張し、Yに対し、雇用契約上の地位を有することの確認等を求めたもの。

【判断】
〔第1審〕
「Yが解雇理由として指摘する事実は、その事実が認められないか、あるいは、有効な解雇理由にならないものであるから、Xに対する注意・指導に関するYの主張はその前提を欠く。Xが就業規則40条3号、5号に該当するとは認められず、そうすると、仮に、Y主張のとおり、本件解雇がXに妊娠を理由としたものでないとしても、本件解雇には、客観的な合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、解雇権を濫用したものとして、無効である(労働契約法16条)。」


〔控訴審〕
「当裁判所は、本件解雇は有効であり、Xは雇用契約上の地位を有するものではなく、また、本件解雇はXに対する不法行為を構成するものではなく、Xの不法行為に基づく請求は理由がないものと判断する。」

「(1) ・・・Xが他の職員らに対してしばしば怒鳴ったりきつい言葉遣いや態度をとったり、叱責するなどしており、これに対し主として検品部門の職員らが強いストレスを感じていたこと、このため、Cが退職したほか、パート職員で検品部門の責任者であるDは、精神的に追い詰められ、Y代表者の慰留によって退職は思い止まったものの、2回早退をしようとし、2回目は実際に早退したこと、その他の職員らもXの言葉遣い等を問題視し、Y代表者に対して繰り返し改善を求めていたこと、Y代表者は、口頭によるものとはいえ、これまで再三にわたり、Xに対し言葉遣いや態度等を改めるよう注意し、改めない場合には会社を辞めるしかないと指導、警告してきたにもかかわらず、Xは反省して態度を改めることをしなかったことがそれぞれ認められる。また、休暇を取得する際に事前に休暇届けを提出せず、自分宛の電話以外を取らず、他のほとんどの職員らに対してきちんとした挨拶もしなくなったことが認められる。
 Xのこのような態度等は、単に職場の良好な人間関係を損なうという域を超えて、職場環境を著しく悪化させ、Yの業務にも支障を及ぼすものであるから、就業規則40条3号にいう「協調性がなく、注意及び指導をしても改善の見込みがないと認められるとき」に該当するほか、同条5号にいう「会社の社員としての適格性がないと判断されるとき」に該当するものと認められる。
 そして、・・・Yは、正社員12名、パート12名ほどの小規模な会社であり、検品部門にはそのうち半数の職員が在籍しているところ、Xをこのまま雇用し続ければ、その言葉遣いや態度等により、他の職員らとの軋轢がいっそう悪化し、他の職員らが早退したり退職したりする事態となり、とりわけ検品部門は人数的にも業務的にもYの業務において重要な役割を果たしており、その責任者や他の職員が退職する事態となれば、Yの業務に重大な打撃を与えることになるとY代表者が判断したのも首肯できるものであると認められる。しかも、上記のとおりYは小規模な会社であり、Xを他の部門に配置換えをすることは事実上困難であるから(原審におけるY代表者の尋問の結果)、この方法によって職員同士の人間関係の軋轢を一定程度緩和させて職場環境を維持することもできず、解雇に代わる有効な代替手段がないことも認められる。そして、・・・Y代表者は、これまで再三にわたり、Xに対し、言葉遣いや態度等を改めるよう注意し、改めない場合には会社を辞めるしかないと指導、警告してきたにもかかわらず、Xは反省して態度を改めることをしなかったものである。
 そうすると、Xについては、上記のとおり就業規則に定める解雇事由に該当し、しかも、本件解雇はやむを得ないものと認められるから、本件解雇につき客観的に合理的な理由がないとか、社会通念上も相当として是認できないとかいうことはできない。
 したがって、本件解雇は、解雇権の濫用に当たるものではなく、有効であると認められる。」

「(2) これに対し、Xは、原則として妊娠・出産等の事由の終了から1年以内に解雇その他不利益取扱いがされた場合は妊娠・出産を「契機として」いると判断され、妊娠・出産等の事由を「契機として」解雇その他不利益取扱いを行った場合は、原則としてこれらを「理由として」いると判断されるなどと主張して、関連の通達や文献を引用した上、本件解雇は、妊娠中のXに対してされたものであり、また、Xの妊娠を理由とするものであり、無効である(雇用機会均等法9条4項本文、3項)などと主張する。
 しかし、上記認定のとおり、本件解雇は、就業規則に定める解雇事由に該当するためされたものであり、Xが妊娠したことを理由としてされたものではないことは明らかであるから、同条3項に違反するものではない。
 そして、本件解雇は、妊娠中のXに対してされたものではあるが、上記認定のとおり、Xが妊娠したことを理由としてされたものではないことをYが証明したものといえるから(なお、本件解雇の直前にFの妊娠が発覚したが、Fは以後も雇用が継続されており、Yが妊娠を理由として職員を解雇しようとしていたことは証拠上窺われない。)、同条4項ただし書きにより、本件解雇が無効となるものではない。」