尾崎織マーク事件-京都地判 平30・4・13 労働判例1210号66頁

【事案】
 Xが,Yに対し,地位確認等の請求をしたもの。

【判断】
「ア 本件解雇は,危機的状況にあったYの経営状態の改善や経営合理化を進めるため,重い負担となっていた経費削減の具体策(Aセンター閉鎖)の実現を目的として行われたものと解されるから,いわゆる整理解雇の一種と解するのが相当である。したがって,本件解雇の有効性判断については,整理解雇の有効性判断と同様の手法で判断するのが相当であり,①人員削減の必要性があること,②使用者が整理解雇回避のための努力を尽くしたこと(解雇回避努力義務),②被解雇者の選定基準及び選定が公正であること,④解雇手続の相当性(労働組合や労働者に対して必要な説明・協議を誠実に行ったか)の4つの要素を総合して判断するのが相当である。」
 イ 検討
  (ア) まず,上記①の人員削減の必要性があることについては,当事者間に争いがない。
  (イ) 次に,上記②の解雇回避のための努力を尽くしたか否かについて検討するに,YがAセンター閉鎖決定以前に,特別退職加算金を付した希望退職者の募集を行ったり,本社ビルを売却したり,人員削減等を進めたりして,財務状況改善に向けて諸々の施策を進めていたことは認められる(〈証拠略〉,弁論の全趣旨)。
 しかしながら,Aセンター閉鎖が決定されたことに伴うXの処遇が平成27年9月から平成28年3月にかけて重要な課題であったところ,その最中にY東京支店において営業担当社員の新規採用が行われていた事実が認められる。そうすると,経費削減の一環として本件解雇がなされた一方で,Y東京支店に所属する営業担当社員を2名新規採用するといった対応は,一貫性を欠くものと評価されてもやむを得ない。少なくともX側に対して東京支店への配転の打診は行うべきであったといえるところ,それをした形跡も窺われないから,解雇回避のための努力を尽くしたと評価するには至らない。
  (ウ) また,上記④のXや労働組合に対して必要な説明・協議を誠実に行ったか否かを検討するに,…Yは,平成27年11月には京都本社勤務の場合は賃金現状維持とする方針を明確にしていたと解される対応をしておきながら,平成28年2月下旬になって突如として京都本社勤務の場合は賃金が大幅に減額されるとの提案を行ったものである上,そのように提案を変更する以上,その理由をX側に理解できるよう説明すべきであるにもかかわらず,的確な説明がなされていないというべきである。さらに,本件解雇通告(ママ)に至っては,X側としては未だ条件の摺り合わせ段階にあると認識していたにもかかわらず,Y側が一方的に設定した期限までに返答がなかったことを理由に解雇通告したと評価せざるを得ず,誠実に説明・協議を行ったとは認め難い。
 確かに,本件のX・Y間のやりとりをみると,X側の要求水準もかなり高いものがあり,それがY側の提案変更に影響を与えていた部分も少なからずあったと思料されるが,あくまでもX側の要求は要求として,それを踏まえて提案変更に及んだのであれば,その理由を誠実に説明すべきである(それにX側が納得するかは別問題である。)ところ,その義務を果たしていたとは評価できない。
  (エ) そうすると,本件解雇は無効というべきである。」

「(1) Xは,Yにおいては定年後再雇用制度として嘱託社員としての採用が確立しており,健康上特に問題がなければ,Yの嘱託社員として再雇用される取扱いであったとして,定年退職日の翌日である平成28年8月4日から,Yの嘱託社員としての地位にある旨主張する。
(2) しかしながら,定年後の再雇用(雇用継続)について,再雇用を希望する者全員との間で新たに労働契約を締結する状況が事実上続いていたとしても,労働契約が締結されたと認定・評価するには,強行法規が存在していれば格別,そうでない場合には,賃金額を含めた核心的な労働条件に関する合意の存在が不可欠である。したがって,本件において,XとYとの間で嘱託社員としての再雇用契約締結に関する合意は全く存在しない以上,その契約上の地位にあることも認められない。
(3) ただし,Xが,定年後に嘱託社員としてYに再雇用(継続雇用)されることを期待していたことは明らかであり,Yにおいて労働者が再雇用を希望した場合に再雇用されなかった例は記憶にないとのY代表者の供述も勘案すると,Yは,…違法無効な整理解雇通知をしたものであり,これによってXの雇用継続の期待権を侵害した不法行為責任を負うと言わなければならない。」