コンチネンタル・ミクロネシア・インク事件=東京地判 平13・12・21 労働判例836号119頁

【事案】
 有期契約労働者であったXらが、Yに対し、期間満了を理由に雇用関係を終了させたのは権利の濫用であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金の支払を求めたもの。

【判断】
〔第1審〕
「(1) フライフォーファイブ契約の法的性質について
Xらは、フライフォーファイブ契約がその文言にかかわらず、実質的には期間を5年とする契約であって、労働基準法13条及び14条の趣旨に照らして期限の定めのない労働契約と同視されるべきと主張する。
 ・・・Yは、フライフォーファイブを導入するにあたり正社員及び契約社員に別紙2の説明を含むパンフレットを配布したが、これには、このプログラムが「5年間に至るまでYの契約客室乗務員として乗務することを求める(requires a commitment for up to five years to be a contract Flight Attendant for Continental Micronesia)」など、あたかもこの制度が契約期間を実質5年間とする契約であるかのような記述もあるが、この記述に引き続き、「このプログラムは1年ごとの再契約という形で行われる(we have set the program in one-year increments)」旨を説明し、「フライフォーファイブのプログラムが5つの個別の契約から成り立っていることを理解することが重要である(It is important that you realize the Fly For Five program is made up of five separate one-year contracts.)。」として契約が1年契約であることの注意を喚起していること、「5年間のサービスを約束するよう期待することはできないし、またYも5年間の仕事を提供することを保証するものではない」旨、また最初の契約は1998(平成10)年4月1日に始まり1999(平成11)年3月31日に満了する旨、契約当事者双方が次期の1年契約の締結を行わないこともありうることが明記されており、これによる契約書の書式(別紙3)にも、この契約が1年契約であって、1999年3月31日に満了することを明記されていること(第2次フライフォーファイブに関しても、説明文書及び契約書に、契約期間を6か月とする修正がなされている以外は全く同一の表現が用いられていることは前提事実のとおりである。)に照らせば、フライフォーファイブ契約が期間を5年とする契約であると解することはできないから、この点に関するXらの主張は採用することができない。したがって、この主張を前提とするXらの解雇権濫用の主張は失当である。
(2) 本件雇止めの効力について
 ア Xらは、フライフォーファイブ契約締結にあたり、YがXらに対し5年間の雇用を保証する言動を繰り返した旨主張するが、これを認めるべき的確な証拠はない。
 (人証略)には、平成10年2月23日の正社員に対する説明の際、Y担当者がフライフォーファイブが契約期間を5年間とする制度であると説明したかのような部分があるが、同日の説明は正社員に対するものであって、別の機会に契約社員であったXらに対して行われた説明が、正社員に対する説明と全く同一の表現あるいはニュアンスで語られたとは限られない。のみならず、証拠(人証略)によれば、上記正社員に対する説明の際、Y側から出席したMは、期間の問題について、「会社側は5年間フルに雇いたいが、会社が5年間を保証できるかといえば、誰に対しても5年間の保証はできない」旨、また、「1年の内にどうなるか、5年の内にどうなるかは分からないが、我々は何とか5年の計画を達成しようとしている」旨の発言をしていることが認められ、この事実に照らすと、上記(人証略)の供述等は容易に採用することができない。
 また、X1の供述によっても、フライフォーファイブの導入の際、同X1がY側から受けた説明は、1年ごとの契約で最長5年まで働けるとの趣旨のものであったと認められ、これが5年の雇用を保証する趣旨のものではないことは明らかである。
 その他、Xらの上記主張を認めるに足りる証拠はない。
 イ Xらは、フライフォーファイブ制度の下で契約期間が5年間まで更新されるのが通常であるとの合理的期待を抱かせる事情があったと主張する。
 なるほど、フライフォーファイブ制度の概要を説明したパンフレットの別紙2によると、フライフォーファイブの制度は勤務年数に比例した累進的ボーナスの支給を約束して、契約した客室乗務員に対し再契約のインセンティブを提示していること、別紙2の記述には、前記のとおりYが応募者に対し5年の就労を期待するような表現部分があること、再契約がなされないこともあり得るがそれはあってほしくない(hopefully unlikely)ことである旨述べられていることが認められる。また、フライフォーファイブは、それまでYと雇用契約を締結していた正社員及び契約社員に対し提示されたものであるところ、この制度導入以前において、Xら契約社員の業務内容は正社員と全く同様のものであったこと、Yが平成7年から導入した契約社員制度により採用された客室乗務員に対し、フライフォーファイブ導入前に更新拒絶がなされた例はないこと、Yは、Xら契約社員の当初契約締結に先立ち、約2か月の期間と費用をかけて正社員と同様の訓練を施していることは前記認定のとおりである。このような事情からすると、Xら契約社員の地位にあった者がフライフォーファイブに基づく最初の1年契約又は6か月契約を締結するにあたり、当該契約が5年間にわたり更新されるものと期待を抱いたとしても無理からぬ面はある。
 しかしながら、他方で、上記第1次フライフォーファイブのパンフレットには、このプログラムが1年ずつの契約であって、契約当事者いずれかの意思により更新されないことがあり得ることが説明されており、これが契約書(別紙3)の契約条件にも明記されていることは前記のとおりであるから(第2次フライフォーファイブに関しても同様である。)、フライフォーファイブを説明するパンフレットや契約書の記載を全体として理解すれば、Xらにおいて、フライフォーファイブによる契約が更新されるとの期待が客観的にみて合理的なものであるということはできない。また、・・・第1次フライフォーファイブに基づく最初の1年契約は、それ以前にXらがYとの間で締結していた期間1年の契約満了前の平成10年4月1日又は5月1日を契約期間の始期としており、従前の契約の更新契約としてではなく、新たな制度の下での契約として締結されたものである上、実質的にみても、X1を除くその余のXらは、いずれも平成9年4月中旬以降にYに期間1年の条件で採用された契約社員であって、フライフォーファイブ導入前からの旧契約の期間を通算しても、雇用関係が継続するとの信頼を抱くのが合理的といえるほどの長期の雇用契約関係にはなく、X1についても、平成8年及び平成9年にそれぞれ期間1年として契約が更新されてはいるものの、旧契約による就労期間は通算3年弱にすぎず、かつ、平成9年の更新契約に際して作成された契約書には、この期間満了後の契約更新は行われないことが明記されていたことに照らすと、他のXらと同様、雇用契約継続の信頼を抱くことが合理的であるといえる事情があったとは認められない。
 以上を総合すれば、Xらの契約更新への期待が客観的にみて合理的なものであるということはできず、その他、本件Xらに対する雇止めについて、解雇制限法理を適用又は準用すべき事情は見出せないから、この法理によりYの雇止めを制限すべきとのXらの主張は採用することができない。」


〔控訴審〕
「当裁判所も、本件雇止めに解雇制限法理を適用ないし準用すべきであると解することはできず、XとY間の雇用契約は契約期間の満了によって終了したものと判断する。」

「解雇制限法理を適用ないし準用するには、雇用契約の当事者間において、期間の定めのある契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたか、少なくとも、期間が満了したというだけでは当然に雇止めになるわけではなく、むしろ雇用関係の継続が期待されていたことが必要になると解すべきであって、Xが主張するような客室乗務員労働の内容という一般論や他の航空会社の取扱いを根拠に、XとY間の雇用契約において契約更新に対する合理的な期待があったとの結論を導くことはできないといわざるを得ない。」

「Yにおいては、フライフォーファイブ導入前の契約社員制度のもとで、契約社員である客室乗務員の平均勤務期間は約2年にすぎなかったし、平成7年に契約社員制度が導入されたばかりであったから、契約社員に対する契約更新が常態化していたということもできない。また、Yは、第1次フライフォーファイブについて、その内容を説明したパンフレットや契約書のほか、口頭による説明の中でも、将来の予測は不可能であって再契約を保証したものではないことを繰り返し明言しており、Xもこのことを十分に理解していたということができるから、フライフォーファイブという名称が必ずしも適切ではなく、Xを含む従来の契約社員に好条件の契約との印象を与えるものであったとしても、なお、契約更新に対するXの期待が客観的にみて合理的なものであったとまでいうことはできない。」