シェーンコーポレーション事件‐東京地判 平31・3・1 労働判例1213号12頁,東京高判 令元・10・9 労働判例1213号5頁

【事案】
 Xが,Yに対し,労働契約上の地位確認等を求めたもの。

【判断】
〔第1審〕
「2(1) 合理的期待の有無
 前提事実によれば,Yの講師約400名の内約100名程度は,1,2年で退職していること,Xは雇用期間1年の契約を1度更新したのみで本件雇止めは2度目の契約更新時期であったことが認められる。そうすると,本件において,Xが講師として再任されると期待することについて,一定程度の合理性は認められるものの,その合理的期待の程度が高いということはできないから,これを踏まえて本件再任拒否の肯否について判断する。
(2) 有給休暇について
 ア 認定事実によれば,Yは計画的年休に関する労使協定として10月労使協定を結んだが,その代表者の選抜方法が労働基準法39条6項の定めに沿ったものではないことが認められ,10月協定により計画的年休が成立したとはいえない。また,その後,Yは平成28年(2016年)11月付けの計画的年休の労使協定の作成を進めたことが認められ,同年11月に計画的年休の労使協定が成立した可能性があるが,成立を認めるに足りる証拠はない。したがって,Xの有給休暇の取得を検討するに当たり,計画的年休に関する労使協定はなかったとの前提で判断せざるを得ない。
 イ 休暇は,労働義務のある労働日について,その就労義務の免除を得た日のことであり,法律上労働者に必ず付与しなければならないと定められている法定有給休暇と,就業規則や労働協約の定めによって初めて成立する会社有給休暇とがあるところ,前提事実によれば,Yは計画的年休を前提に法定有給休暇を超える日数の有給休暇を従業員に付与しており,法定有給休暇を超えた日数は会社有給休暇であるといえる。そして,法定有給休暇と会社有給休暇はその内容が異なり,法定休暇は,労使協定による計画付与を除き労働者の希望する時季に与えなければならず,労働者が希望する日を特定して会社に通告することにより年休が成立して使用者の承認を必要としないのに対し,会社有給休暇は,請求の時季,請求の手続等労働者の休暇取得について制限を設けてもよく,使用者の承認によって初めて休暇が成立するとしてもよいものであることを踏まえると,計画的年休とした15日間に法定有給休暇を当てることはできないが,会社有給休暇はYの承認した日すなわち計画的年休とした日に限り取得することができ,従業員が希望する時季に取得することはできず,法定有給休暇についてのみ従業員が希望する時季に取得することができると解するのが相当である。
 ウ そして,認定事実に記載したXの休暇等の状況によれば,Xは平成27年(2015年)9月1日から平成29年(2017年)8月31日の間,計画的年休や定休日以外に35日間の有給休暇,すなわち法定の有給休暇を14日超えて有給休暇の申請をしていたこと,Yは,平成28年(2016年)11月以降有給休暇が残っていないため出勤を促すメールをXに送信しており,Xは有給休暇と扱われないことを知りながら休暇の申請をしていたことが認められる。以上によれば,Xは上記期間において14日間の欠勤をしたと判断される(ママ)
(3) Xの勤務内容について
 認定事実によれば,Y(ママ)の授業内容は,Yの授業方針に必ずしも沿ったものではなく,Xの代替授業を行った他の講師や生徒から苦情が出ていたこと,授業への遅刻・欠勤や準備不足もあり,授業を受け持っていたフランチャイズ校の講師から外される事態に至っていることが認められ,勤務態度は不良であると言わざるをえない。この点,Xは,授業の欠勤はストライキを理由とするものであり,それをXの不利に斟酌することは許されない旨主張するが,ストライキによる欠勤を考慮の対象から外したとしてもXの勤務態度が不良であるとの(ママ)判断することができるから,Xの上記主張は採用しない。
(4) 以上によれば,Xは取得できる有給休暇を14日超えて行使した結果,理由のない欠勤を14日間しており,勤務内容についてみてもYのカリキュラムに従わないばかりか,フランチャイズ校から講師交替を求められるにいたっているという前判示に係る諸事情を総合考慮すれば,Yにおいて,Xの講師としての雇用を継続しない旨の判断に至ったことは,客観的に合理的な理由があり,社会通念上も相当であると認められる。」

〔控訴審〕
「2 労働契約法19条2号該当性について
 Yは,従業員講師とは一律に1年間の有期労働契約を締結している(前提事実(1))が,契約の更新を希望する行使との間では,遅刻が多かったり,授業の質が低いなどの事情がある場合を除き,通常は契約の更新をしている(〈人証略〉)。Xとの間でも,平成27年3月1日に1年間の有期労働契約を締結し(前提事実(2)ア),その後,Xから授業観察の申出を拒否されたり(認定事実(5)イ(ア),前日の午後11時29分になってから翌日のストライキを通知されたり(認定事実(5)ウ),Xの授業を観察した上司が7項目について改善必要との講評をした(認定事実(5)エ)との事情があったものの,その後の平成28年3月1日,Xとの契約を更新した(前提事実(5)エ)。このような経緯からすると,Xにおいて本件雇用契約の契約期間の満了時に同契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があったと認めるべきである。
 Yは,Xが有給休暇についての独自の主張を繰り返して欠勤を続けたのであるから,契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があったとはいえないと主張するが,後述のとおり,有給休暇に関するXの主張は正当なものであるから,Yの主張は採用できない。
3 本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないといえるか否か
(1) 休暇の取得について
 ア 労働基準法39条1項及び2項によりYがXに与えなければならない法定年次有給休暇は,平成27年9月1日からの1年間について10日,平成28年9月1日からの1年間について11日である(認定事実(2))。そして,有給休暇は,原則として,労働者の請求する時季に与えなければならないこととされている(同条5項本文)。
 もっとも,同条6項の要件を満たす労使協定があれば,年間5日を超える部分については,与える時季を使用者が定めることができる。しかし,弁論の全趣旨によれば,平成28年11月までにそのような労使協定が結ばれたことはないと認められる。また,同月に結ばれた10月労使協定(認定事実(3))についても,労働者側の講師代表3名は講師以外の従業員の代表ではなかった上,事業場である学校ごとに選ばれたものではなく,複数校をまとめたエリアごとの代表であったから(認定事実(3)イ及びウ),事業場の労働者の過半数を代表する者(労働基準法39条6項)に当たるとはいえず,したがって,労働基準法39条6項の要件を満たす労使協定とはいえない。
 そうすると,Xに与えられた法定年次有給休暇について,その時季をYが指定することはできず,Xを含む従業員が自由にその時季を指定することができたというべきである。
 イ 次にYは,就業規則において,Xを含む講師に対し,法定年次有給休暇を超える年間20日の有給休暇を与えると定めている(前提事実(3)ア)ところ,そのうち法定年次有給休暇の日数を超える部分である会社有給休暇(平成27年9月1日からの1年間については10日,平成28年9月1日からの1年間について9日である。)については,労働基準法の規律を受けるものではないから,Yがその時季を指定するものとすることが許されると考えられる。
 ウ ところで,Yがその就業規則において定める計画的有給休暇制度においては,法定年次有給休暇と会社有給休暇とを区別することなく,年間の有給休暇20日のうち,15日分について,Yがその時季を指定することとされている(前提事実(3)ア)ところ,上記ア及びイに説示したところによれば,Yが時季を指定することができるのは会社有給休暇に限られ,法定年次有給休暇については,時季を指定することができない。そして,Yは,法定年次有給休暇と会社有給休暇を区別することなく15日を指定しており,そのうちどの日が会社有給休暇に関する指定であるかを特定することはできない。したがって,上記の指定は,全体として無効というほかなく,年間20日の有給休暇の全てについて,Xがその時季を自由に指定することができるというべきである。
 エ なお,Yは,計画的有給休暇制度は全ての従業員講師から同意を得ていると主張するが,仮にそうであったとしても,そのことは以上の判断を左右するものではない。
 また,Yは,計画的有給休暇制度が無効とされるのであれば,有給休暇として20日を与える旨の規定も無効であるとも主張するが,有給休暇の日数とその時季の指定とは別の問題であるから,Yの主張は採用できない。
 さらに,Yは,平成27年9月1日からの1年間と平成28年9月1日からの1年間でそれぞれ20日,合計40日の有給休暇が認められるとしても,Xは,Xが指定した35日(認定事実(4)ア)のほか,Yが指定した日のうち14日と合わせて,合計49日の休暇を取得したから,理由のない欠勤が9日もあることになると主張する。しかし,Yが指定した日のうち14日については,Yが就労を免除したものであるから,理由のない欠勤とみることはできない。したがって,Yのこの主張も採用できない。
 オ 以上によれば,Xが有給休暇として取得した休暇について,正当な理由のない欠勤であったと認めることはできない。
(2) Xの勤務内容について
 ア Xは,①平成28年3月から同年6月までの間に,フランチャイズ校2校を複数回欠勤し,また,B1校での授業中,生徒が怪我をしたことがあり,両校からの要請により,同月,両校の講師から外され(認定事実(5)キ),②同年7月,B6校への出勤を2分ほど遅刻し,また,遅刻しそうな場合にしなければならないY本部への連絡をせず(認定事実(5)オ),③同年9月,生徒からXがテキストを使用しないとのクレームを受け,また,Xの代わりに授業をした同僚講師から,Xの作成した授業記録が実際に行った授業内容と異なっていたため代替授業の計画を立てるのが難しかったとの指摘を受けた(認定事実(5)カ)。
 しかし,①については,フランチャイズ校2校の欠勤はいずれもストライキの実施によるものであることがうかがわれるから,雇止めをするかどうかの判断をする際に考慮に入れるのは相当でない。また,授業中に生徒が怪我をしたことについては,Xが危険な状態を作出し,又は放置していたと認めるに足りる証拠はないから,これをXの問題と捉えることはできない。
 ②については,遅刻が2分程度であったこと,このB6校での遅刻のほか,B1校でも何度か遅刻が指摘されている(〈証拠略〉)ものの,遅刻の程度,態様は必ずしも明らかではないことに照らすと,全く問題でないとまではいえないにしても,その重要性が大きなものとまではいえない。
 ③については,テキストを使用していないとの指摘を受けて,テキストを活用するようにしたと上司であるJに伝えていること(〈証拠略〉),その後,テキストを使用していない旨の再度の指摘を受けた事実をうかがわせる証拠がないこと,授業記録の記載についても,このような指摘があったのは1回のみであったことからすれば,②と同様,重要な問題とまではいえない。
 イ Yは,Xが準備不足で授業に臨んでいたと主張し,Yにおいてフランチャイズ校を担当するFは,B1校から,Xが準備をしないで授業を行っているとのクレームがあったと証言する。しかし,その証言によっても,その準備不足や授業の具体的な内容は明らかではないから,雇止めの有効性を判断するに当たり,重要な問題となり得るものとはいえない。
 ウ その他,Yは,Xの勤務内容が不良であるとして,種々の主張をするが,いずれも雇止めをするかどうかの判断に際して重視することを相当とするようなものとは認められない。
(3) 以上の(1)及び(2)の検討の結果によれば,本件雇止めは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとまでは認められないといわざるを得ない。」