学校法人札幌大学(給与支給内規変更)事件‐札幌地判 平29・3・30 労働判例1174号12頁,札幌高判 平29・10・4 労働判例1174号5頁

【事案】
 Xらが,Yに対し,Yが行った給与支給内規の変更は,合理性がなく就業規則を不利益に変更するものであるとして無効である等と主張して,減額された賃金の差額の支払等を求めたもの。

【判断】
〔第1審〕
「使用者は,労働者と合意することなく,就業規則を変更することによって労働者の不利益に労働条件を変更することは原則として許されないが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況や代替措置そのほか関連する他の労働条件の改善状況,同種事項に関する我が国社会における一般的状況等の事情等に照らし,当該変更が合理的なものである場合には,当該変更によって労働者の労働条件を不利益に変更することができる(労働契約法9条,10条参照)。とりわけ,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については,当該変更が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることが必要とされるものと解される(最高裁判所平成9年2月28日第2小法廷判決・民集51巻2号705頁参照)。」

「Yは,教職員組合に対して数度の申入れを行い(…),教職員組合の合意を経て勤務延長者の年俸額減額を実現しようと企図し,数年にわたり同組合との団体交渉を継続して行っていたものであるが,団体交渉が難航するや,平成24年9月4日付けの通知及び同月13日付けの団体交渉の場で,それまでのY提案(…)を突如として撤回し,従来の勤務延長の勤務延長区分を廃止して勤務延長者の年俸額を一律に480万円に減額することを初めて教職員組合に対して通知し,同年10月2日,平成25年度に定年年齢に達する教員らに対し,本件内規変更により勤務延長教員の年俸額を一律に上記額に減額することを決定したとして,今後予定する本件内規変更の具体的内容について通知するに至った(…)。そして,上記認定事実をみても,Xらの年俸額を大幅に(ママ)する根拠や本件内容変更の具体的な内容について,Yが教職員に対して十分な説明を行ったとは認められない(Yは,上記各通知に先立って「世間並み」,「他大学並み」など(ママ)いう表現を用いて予想し得る減額幅について説明していたとも主張するが,そのような説明では,具体的な本件内規変更による年俸額の減額の程度が明確ではなく,十分な説明がなされていたものと評価することは到底できない。)。
 このような交渉の経緯に鑑みれば,従前の提案内容を突然覆し,新たな労働条件,しかも,それまでの提案額をはるかに下回る額へと減額することを内容とする提案を行ったYとしては,新たな当該提案の内容が当時の本件大学の経営状況に照らして合理的であることや,勤務延長者の年俸額を480万円まで大幅に減額することの具体的根拠などについて説明する必要があったとうべきである。しかし,Yが,このような説明を行ったとは認められず,しかも,教職員組合に新たな提案を行ってから1か月も経たないうちに,平成25年度に定年に達する教員らに対し,上記提案の内容が決定事項であるとして通知して上,本件内規変更に至る労働組合との交渉が適切かつ十分に行われたものとは言い難い。」

「本件内規変更による勤務延長教(ママ)職員の年俸額の減額に関し一定の必要性はあったと認められるものの,本件内規変更によりXらに賃金額の大幅かつ急激な減額という重大な不利益が生ずること,同変更に際して上記のような不利益の重大性に対応する代償措置あるいは経過措置がとられていないこと,さらに,教職員組合との交渉が適切かつ十分なものではなかったこと等を総合考慮すると,本件内規変更は,そのような重大な不利益をXらに対して法的に受忍させることもやむを得ない高度の必要性に基づく合理的なものであったと解することはできないから,無効であるといわざるを得ない。

〔控訴審〕
「Yとしては,改めて本件内規変更の必要性及び合理性について,教職員に対して十分な説明をする必要があったというべきところ,Yがそのような説明を行ったと認めることができないことは,原判決が説示するとおりである。したがって,Yの本件内規変更に至る教職員組合との交渉が適切かつ十分なものであったとはいえない。」

「Xらは,本件内規変更により,その年俸について,最大4割もの大幅な減額を強いられることになるものであるから,その不利益に先立ち平成19年には約1200万円から800万円への大幅な減額がなされているという事情及び本件内規変更において,Xらの上記のような重大な不利益を緩和するための経過措置や代償措置が全く講じられていないことからすると,Yが主張する…事情を考慮しても,本件内規変更が,Xらに対し上記のような重大な不利益を法的に甘受させることもやむを得ないものであったと認めることはできない。」

 │  このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote  (00:00)

記事検索
カテゴリー
月別アーカイブ
livedoor 天気