July 03, 2018

医療法人社団康心会(差戻審)事件‐東京高判 平30・2・22 労働経済判例速報2343号16頁

【事案】
 最2小判 平29・7・7 裁判所HP http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86897が,「XとYとの間においては、本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金を年俸1700万円に含める旨の本件合意がされていたものの、このうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかったというのである。そうすると、本件合意によっては、Xに支払われた賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することすらできないのであり、Xに支払われた年俸について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
 したがって、YのXに対する年俸の支払により、Xの時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない。」,「Yが、Xに対し、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金を全て支払ったか否か、付加金の支払を命ずることの適否及びその額等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。」とした差戻審。

【判断】
「使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには,割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として,労働基準法37条等により定められた方法により算出された割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ,同条の上記趣旨によれば,割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては,上記の検討の前提として,労働契約における基本給等の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であり(最高裁平成3年(オ)第63号同6年6月13日第2小法廷判決・裁判集民事172号673頁,最高裁平成21年(受)第1186号同24年3月8日第1小法廷判決・裁判集民事240号121頁,最高裁平成27年(受)第1998号同29年2月28日第3小法廷判決・裁判所時報1671号5頁参照),上記割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法37条等に定められた方法により算出された割増賃金の額を下回るときは,使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである(上告審判決)。
 (2) XとYとの間においては,本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金を年俸1700万円に含める旨の本件合意がされていたものの,このうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかった(…)。そうすると,本件合意によっては,Xに支払われた賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することすらできないのであり,Xに支払われた年俸について,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
 したがって,YのXに対する年俸の支払により,Xの時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない(上告審判決)。」

「Yは,本件合意は,Xによる割増賃金の請求権を放棄する意思表示を含むと主張する。
 しかし,上記主張は,労働基準法13条の趣旨に照らし,採用できない。なお,本件合意は,本件時間外規程に基づき支払われる以外の時間外労働等に対する割増賃金については,年俸1700万円に含まれる旨を合意したものであるから,Xが割増賃金の請求権を放棄する意思表示をしたとは解されない。したがって,Yの上記主張はこの点からも採用することができない。」

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