セブン-イレブン・ジャパン事件 ‐ 大阪地決 令2・9・23 労働経済判例速報2440号3頁

【事案】
 Xが,フランチャイズ契約を解除したYに対し,建物を仮に引き渡すことを申立てたもの(第1事件)と,YがXに対し,Xによるフランチャイズ契約の解除が無効であるにもかかわらずXがYとの取引を拒絶しているなどとして地位確認等の仮処分を求めたもの(第2事件)。

【判断】
「イ(ア) 以上を踏まえて本件におけるYの顧客に対する対応についてみると,上記認定事実(8)によれば,Yは,①顧客に対して暴行に及ぶ,顧客等の自動車を傷つけるなどの有形力を行使した(認定事実(8)ア,ウ,カ,キ)ほか,②自らの意に沿わない言動をした顧客等に喧嘩腰で乱暴な物言いや侮辱的な言動をしたり,横柄な態度をとったりしていたこと(同アないしカ)が認められる。これらのYの顧客に対する対応(以下,これらを併せて「本件各顧客対応」という。)は,顧客等の身体,財産を傷つけ,顧客等に不快な印象を与えるものであって,笑顔で挨拶する,丁寧な言葉遣いをするなどして顧客に対して気持ちを込めて接客する「フレンドリーサービス」に反するものといわざるを得ない。そして,Yは,少なくとも1年以上の間,これらの行為を繰り返していたと認められる。
 なお,Yは,上記以外にも,時期や状況等は必ずしも明らかでないものの,顧客等に対して暴行に及んだり,乱暴で横柄な態度をとったりしていたことが何度もあったことが窺われる(書証略)。
 (イ) この点,Yは,顧客が暴言を吐くなどしたのに対し,Yとして必要な範囲で毅然とした顧客対応を行ったにすぎないと主張する。しかしながら,たとえ顧客等が感情的になって暴言を吐いたということがあったとしても,顧客等に暴行を加えたり侮辱的な発言をしたりすることが「毅然とした」顧客対応であるとは評価できないこと,本件店舗の近隣に所在する店舗の経営者らは,これらの店舗においても,態度の悪い顧客や苦情等を申し立てる顧客は存在しているものの,そのような顧客に対しても感情的にならず,冷静で丁寧な接客をする(「フレンドリーサービス」を実践する)ことで,トラブルの多くを回避できていると述べており(書証略),これらの店舗において顧客とのトラブルが多発しているという事情は窺われないことと比較すると,Yの本件各顧客対応は,トラブルを助長,激化させるものであるといわざるを得ないこと,以上の点からすると,毅然とした顧客対応を行ったにすぎないというYの上記主張は採用できない。
 ウ そして,本件店舗に関するXのお客様相談室への苦情等の件数は,Xの全店舗全国平均を大きく上回っており(認定事実(4)),本件店舗における警察への通報件数も近隣のコンビニエンスストアと比較して極端に多く(書証略),賃貸人代表者を含む本件店舗の近隣に所在する学校の関係者も,本件店舗を問題のある店舗であると認識しており(書証略),Yの接客方法に対する苦情等を述べた者の中には,Yや本件店舗のみならずフランチャイザーであるXに対しても不快感を示している者も少なからず存在している(書証略)などといった事情も認められることも併せ考慮すると,Yの本件各顧客対応により,セブン-イレブン・イメージ及びXの信用は低下したものと認めるのが相当である。
 エ 以上によれば,Yの本件各顧客対応は,いずれもセブン-イレブン・イメージの構成要素の一つである接客方法(「フレンドリーサービス」)に反し,セブン-イレブン・イメージ及びXの信用を低下させていたといえるから,本件基本契約5条3号及び4号に違反するものと認められる。」

「イ このように,本件各ツイートが正当な論評の域を逸脱してX及びその取締役らを誹謗中傷するものやXの社会的信用を低下させ得るものであることに加え,Xと契約関係にあるYが実名を用いて本件ツイートをしていること,本件各ツイートはツイッターという一般に広く利用されているソーシャルネットワーキングサービス上でされたものであり,その内容は広く伝播されたと認められること,以上の点を併せ考慮すると,本件各ツイートは,全体として,不特定多数の者に対し,Xについて否定的な印象を与えるものであって,その信用を低下させるものであると認められる。
 ウ 以上によれば,Yが本件各ツイートをしたことは,本件基本契約5条4号に違反するというべきである。」

「(1) 上記2で述べたとおり,Yによる本件各顧客対応及び本件各ツイートの投稿は,いずれも本件フランチャイズ契約の解除事由に該当するものであるから,その存在自体がX・Y間の信頼関係が破壊されていることを基礎付ける一事情であるといえる。この点に加え,①Yは,平成31年2月及び令和元年8月に,Xの担当者や取締役から,顧客対応の問題を指摘され,改善するように求められていた(認定事実(6),(7))にもかかわらず,自身の顧客対応に問題はないとの認識を示し続け,その後も顧客に対する暴力を含む「フレンドリーサービス」に反する顧客対応を繰り返していたこと,②同年12月20日のXの担当者等との面談の際も,Xの担当者等に自身の主張を述べるのみで,自らの顧客対応を省みようとする態度を示さなかったこと(認定事実(10)),③Y自身が,ツイッターに「既にもうお互い信頼関係は崩れています。」などとツイートし(本件ツイート目録記載14),Xを信頼していないと公言していたこと,以上の点が認められ,これらの点からすると,YのXへの対応は,全体として,契約当事者としての誠実さを欠くものといわざるを得ず,X・Y間の信頼関係を破壊するに足りるものと認められる。
 (2) この点,Yは,Xによる本件フランチャイズ契約の解除は,YがX本部の意向に反して時短営業に踏み切ったことに対する意趣返しであり,自己の意向に沿わないフランチャイジーを排除しようとしているものである旨主張する。
 しかしながら,Xが本件フランチャイズ契約の解除を企図したきっかけが,YのXの了解を得ずに深夜営業の中止に踏み切ったことであると認めるに足りる的確な疎明があるとはいえない。また,仮にYが主張するよう.に,本件の背景に,営業時間等の方針についてX・Y間の対立という事情があったとしても,上記(1)で説示した点に照らせば,それをもって,X・Y間の信頼関係が破壊されたとの評価が妨げられるものではない。したがって,Yの上記主張は採用できない。
 そして,そのほかに,本件において,X・Y間の信頼関係が破壊されたとの評価を妨げる事情は見当たらない。
 (3) 以上によれば,Xが本件催告兼通知書による催告をした時点で,X・Y間の信頼関係は破壊されていたと認められる。」