NHK堺営業センター(地域スタッフ)事件‐大阪地判 平27・11・30 労働判例1137号61頁、大阪高判 平28・7・29 労働判例1154号67頁

【事案】
 有期の委託契約を中途解約されたXが、Yに対し、Xは労働契約法及び労働組合法上の労働者にあたり、中途解約は労働契約法17条1項違反である等と主張して、地位確認等を求めたもの。

【判断】
〔第1審〕
「(ア)・・・地域スタッフは、Yの具体的な仕事の依頼、業務従事地域の指示等に対して諾否の自由を有していないといえるが、これは、委託業務を包括的に受託したことによるものであると解されるから、これをもって直ちに指揮監督関係を肯定することはできない。さらに、地域スタッフは、①Yから業務の内容及び遂行方法について具体的な指揮命令を受けているとまではいえないこと、②指示された業務従事地域内の勤務場所・勤務時間に関する拘束性は緩やかであること、③業務の再委託が容認され、委託業務の代替性が認められること、④報酬についても、使用従属性を補強する側面と減殺する側面の両方を併せ持ち、一義的に解することができないことを総合すると、使用従属性を認めることはできないから、労働基準法及び労働契約法上の労働者であるということはできない。
(イ) しかしながら、①地域スタッフは、個人であること、②本件契約は、民法上の労務供給契約(混合形態のものを含む。)にあたること、③地域スタッフは、Yの業務従事地域の指示(具体的な仕事の依頼)に対して諾否の自由を有しないこと、④Yは、地域スタッフに対し、典型的な請負や委任ではみられないほどに手厚い報告・指導体制を敷いており、Yと地域スタッフとの間に広い意味での指揮監督関係があること、⑤その報酬も一定時間労務を提供したことに対する対価と評価される側面があること、⑥地域スタッフは再委託することを容認されているものの、地域スタッフ全体に占める再委託者の割合は2パーセント前後と少なく、Xは再委託を行っていないこと、⑦地域スタッフの事業者性は弱いことを併せ考慮すると、Xは、Yに対し、労働契約上の労働者に準じる程度に従属して労務を提供していたと評価することができるから、契約の継続及び終了においてXを保護すべき必要性は、労働契約法上の労働者とさほど異なるところはないというべきである。そして、労働契約法は、純然たる民事法であるから、刑事法の性質を有する労働基準法と異なり、これを類推適用することは可能である。そうすると、期間の定めのある本件契約の中途解約については、労働契約法17条1項を類推適用するのが相当である。」

「ア 契約の当事者は、契約の有効期間中はこれに拘束されるのが契約法上の原則であるから、期間途中の解雇を認めるためには、この原則に対する例外を認めるに足りるだけの重大な事由が必要である。したがって、労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由」とは、期間の定めのない労働契約における解雇に必要とされる「客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる事由」よりも限定された事由であって、就労不能や重大な非違行為など期間満了を待たずに直ちに契約を終了せざるを得ないような事由を意味すると解するのが相当である。
 なお、・・・Xは、Yに対し、・・・契約更新にあたり、Yからの中途解約を認める旨の本件誓約書を提出しているが、労働契約法17条1項は、期間の定めのある労働契約の解雇(ママ)について強行的な効力を有すると解するのが相当であるから、本件誓約書の上記部分は、同項の類推適用により無効であるというべきである。
イ ・・・本件中途解約は、業績不良を理由とするものであるが、これは期間満了を待たずに直ちに契約を終了せざるを得ないような事由であるとまではいえないから、労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由」には当たらないというべきである。
 なお、Xは、本件中途解約当時、うつ病のため就労不能であることを理由として休業していたが、Yは、本件訴訟において、Xがその当時就労不能であったことを争っているところであるから、本件中途解約の理由に就労不能が含まれると解する余地はない。
 ウ よって、本件中途解約は、労働契約法17条1項の類推適用により、無効であるといわなければならない。」

「イ ・・・Xは、①平成21年度第3期から平成24年度第2期までの3年間にわたり、業績不良のため特別指導の対象者とされていたこと、②6度目の契約更新後(平成23年4月以降)も、総じて業績が低迷していたこと、③Yの職員の指導・助言に対して素直に従う姿勢を見せなかったこと、④平成23年4月4日から同年8月3日までと平成24年7月25日から同年9月1日(本件中途解約の日)まで2度も精神疾患を理由に長期休業をしたことを総合考慮すると、復職を申し出た平成25年1月以降に稼働することができなかったことを踏まえても、Xの本件更新申込みに対するYの拒絶は、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であるというべきである。
 ウ これに対し、Xは、Xが他の地域スタッフに比して業績不良であったわけではないと主張する。しかしながら、証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によれば、Xが特別指導の対象とされていた期間(平成21年度第3期から平成24年度第2期まで)の境営業センターの同一種別の地域スタッフにおけるXの目標達成率の順位は、別紙・・・記載のとおりであると認められ、これによれば、Xの業績は、平成21年度第4期以降、堺営業センターの同一種別の地域スタッフの中で常に低位にあったといえるから、Xの上記主張を採用することはできない。」

「XY間の本件契約は、平成26年3月31日、期間満了により終了したといえるから、Xの労働契約上の地位確認の請求は、理由がない。」


〔控訴審〕
「当裁判所は、Xは労働契約法上の労働者に該当せず、本件中途解約について労働契約法17条1項は適用も類推適用もされないところ、本件中途解約について、Xの主張する①公序違反(不当労働行為)、②本件契約の解約制限条項違反、③信義則違反はいずれも認められず、本件中途解約は有効であると判断する。」

「地域スタッフについて、・・・使用従属性の存在を認める方向の事実は認められず、地域スタッフのYに対する使用従属性を認めることはできない。
 したがって、Xが、労働基準法及び労働契約法上の労働者であるということはできないし、本件契約に労働契約法が類推適用されるということもできない。」