ホンダ開発事件‐さいたま地判 平28・10・27 労働判例1170号63頁,

【事案】
 Xが,Yに対し,配転の無効確認等を請求したもの。
 配転の無効確認については,XがYを退職していることから確認の利益が失われたというべきとして却下。
 上司らの言動等(Cによる平成23年12月の面談の際の発言,「休みの日は何をしているの。」,「会社の外に友達はいないの。」,「同期入社の人と飲みに行ったりしないの。」,「同期との飲み会は何より優先すべきだよ。そうしないと甲野さんの周りから誰もいなくなるよ。」,平成24年8月の面談の際の発言,「甲野さんのやっている事は仕事でなく,考えなくとも出来る作業だ。」,Dによる平成25年7月の新入社員の実習終了後の送別会の二次会での「多くの人がお前をばかにしている。」など)による不法行為の成否の判断された。

【判断】
〔第1審〕
「Xは,…C及びDの言動がXに対するパワハラであった旨主張する。確かに,これらの言動の中には,Xが自尊心を傷付けられ,精神的苦痛を受けたと考えられるものがある。しかしながら,これらの言動は,C及びDが,Xに対する指導・助言のためやA5総務における事務分配上の必要からしたものとして特に不自然なものがあるとは認められず,こられが同人らのXに対する悪意や害意によるものとはおよそ認められないのであり,そのいずれについても,Xが,Yの従業員として,また,C及びDの部下として,受忍すべき限度を超えるものであったとは認められない。」

「エ Cの発言1について
Xは,平成23年12月,Cが,Xに対し,休日に何をしているのか,会社外に友人はいないのか,同期との会合を優先すべきだ,そうしないと甲野さんの周りから誰もいなくなるよ,などと言ったのは,嫌みであり,また,私生活上の行動について上司が口出しするのは不当である旨主張する。
 しかし,会社での仕事や人間関係は,私生活とは無縁に成り立つものではないこと,会社での人間関係は,仕事を円滑に進める上で大切であることから,上司が部下に対し,自らを含む会社の従業員などとの間で,会社外での生活を含めて何でも話題にしたり相談したりできるような仲間意識や会社への帰属意識を持つようになることを希望するのは自然なことであり,Xの上記主張に係るCの発言は,いずれもそうした希望に基づく質問や助言の程度を超えるものであったとは認められないから,それが嫌みであったとか不当であったということはできない。
 オ Cの発言2について
 Xは,平成24年8月ころのCの「甲野さんのやっていることは仕事ではなく,考えなくても出来る作業だ。」との発言は,Xを揶揄するものであった旨主張する。
 しかし,証人C(〈証拠略〉)によれば,Cはその発言を記憶していないものの,仮にその発言をしていたとすれば,Xの仕事ぶりを見て,もっと自分で頭を使って考えて仕事をして欲しいと思っていたので,その趣旨で,助言として発言した可能性があると述べており,この供述を覆すに足りる証拠はない。これがXに対する不法行為となるものとは認められない。」

「コ Dの発言2について
 …平成25年7月の実習生の送別会の二次会でDが「多くの人がお前をばかにしている。」などと発言したことについては,Xに精神的苦痛を生じさせたと認められるが,この発言がYの事業の執行に当たりしたものと言えるかどうはさておくとして,どのような会話の流れの中での発言であったかについてはXも記憶しておらず明らかでなく,これを直ちにパワハラなどとして不法行為となるものと認めることはできない。その発言について,居合わせた者の中にはDのXに対するエールのように聞こえたとする意見もあったことなどからすると,Dとしては,当時,Xに対する他部署の評価に懸念するものがあり,Xを励まし,Xが意識を変えて仕事に取り組むことを求めたいとの思いから出た発言であった可能性があると考えられる。また,それがX以外に同席する者がある中で発言されたことについては,その内容として,具体的な事実を含むものではないこと,従って,個別面談などの席で指導として言うに相応しいこととは思われないこと,その場に同席していた者がA5総務の総務担当などに限られていたようであること(実習生がいたかどうかは明らかでない。)などからすれば,これは,気を許した席での上司の愚痴のようなものであって,その発言の当否は問題となりうるとしても,不法行為の成否を問題にすべきものとまでは認められない。」

〔控訴審〕
「Cの平成23年12月の面談の際の発言…は,X本人尋問の結果からうかがわれるXの内向的な性格に加え,同期会が関東地区で行われたことに鑑みると,Yにおける上司で,先輩社員であることからの助言であるとしても,配慮を欠いたものというべきである。また,Cの平成24年8月の面談の際の発言…についても,ミスは重ねながらも,ケアレスミスをなくし,少しずつではあるができる役割を増やそうとしているXに対し(〈証拠略〉),配慮を欠いた言動であり,これを聞いたXが悔しい気持ちを抱いたことは十分に理解できる。さらに平成25年7月の新入社員の実習終了後の送別会でのDの「多くの人がお前をばかにしている。」との発言…に至っては,Xに対する配慮が感じられない発言であり,内向的な性格のXが「多くの人って誰ですか」と問いただしたことからも,Xの屈辱感には深いものがあったというべきである。以上のC及びDの言動並びに本件異動は,一体として考えれば,Xに対し,労働者として通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を課すものと評価すべきであり,かつ,前記C及びDの言動はYの業務の執行として行われたものであることから,全体としてYの不法行為に該当する。
 なお,Yは,…Dの発言は,私的な2(ママ)次会での発言であって,Yの業務の執行によるものではないと主張するが,その会は,新入社員の実習終了後の送別会の二次会で,Xは飲酒もせずに参加していたこと,その機会が宴席ではあるものの,発言内容は,Yの指導者によるXのYにおける業務に関するものであることを踏まえると,Yの業務に密接に関連したものと評価でき,前記主張は理由がない。」

 │  このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote  (00:00)

記事検索
カテゴリー
月別アーカイブ
livedoor 天気