日本郵便(休職)事件‐東京地判 平29・9・11 労働経済判例速報2340号28頁

【事案】
 時給制契約社員である期間社員として雇用されていたXが,Yに対し,雇止めが無効であるとして,地位確認等をしたもの。

【判断】
「…Yにおいては,正社員が私傷病により勤務ができない場合,勤続年数に従って90日又は180日の病気休暇(有給)が認められるほか,3年以内で必要な期間の休職が認められること,平成29年4月1日以降,無期転換社員についても,90日の病気休暇(無給)と1年以内の休職が認められること,これに対し,期間雇用社員は,1年度において10日の病気休暇(無給)が認められるものの,休職制度の規定はないことが認められる。
 これに対し,Xは,郵便の職場において期間雇用社員は,正社員と同一の労働を低賃金で長期継続し,職場を支えていること,Xは,郵政公社,郵便事業株式会社ないしYにおいて,長期間にわたり,正社員と同様の職務に従事してきたこと,この間,高評価がされ,多数回にわたり契約更新がされてきたことなどからして,労働契約法20条所定の「同一労働同一賃金同一待遇の原則」に則り,Xについても,正社員休職制度,少なくとも無期転換社員休職制度を適用又は準用すべきであると主張する。
 この点,労働契約法20条は,同一の使用者と有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件の相違が不合理なものであることを禁止するところ,上記相違が不合理か否かは,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。),当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して判断することとなる。
 これを本件についてみるに,郵便の職場において,期間雇用社員が多様雇用されており,業務において重要な役割を果たし,不可欠の存在となっているとしても,その職務内容は,役割の違いや責任の軽重等からして,管理職はもとより,それ以外の正社員とも自ずと異なるものであり,業務内容の一部に重なる部分があるとしても,全体としてみれば同一の労働を行っていると解することはできず,職務内容の変更や人事異動の有無等においても大きく異なるものと解される。また,正社員や無期転換社員については,長期的な雇用の確保という観点からいわゆる休職制度を設ける要請が大きいのに対し,期間雇用社員については,反復継続して長期契約が更新されることにより,契約更新の期待に合理的な理由が認められるような場合であっても,使用者において,休職制度をもって,長期的な雇用の確保を図るべき要請は必ずしも高くないものと解される。
 そうすると,Yにおいて,正社員及び無期転換社員について休職制度を設け,他方,期間雇用社員については短期間の病気休暇を認めるのみで,長期の休職制度を設けていないとしても,労働者の職務の内容,その他の事情を考慮すると,その相違が不合理と認めることはできない。
 したがって,Xの上記主張は採用することができず,Xに正社員休職制度ないし無期転換社員休職制度の適用又は準用を認めることはできず,これを前提とするXの主張には理由がない。」

「…Xについて,本件雇用契約に至るまで,人事管理規程34条1項に基づき,各契約期間が満了する30日前までに契約更新の可否を決定した上で,期間満了予告通知書により,契約期間の終了を通知するとともに,Xの同意を得た後,期間雇用社員就業規則12条1項に基づき,新たな期間雇用契約を締結し,期間雇用社員雇入労働条件通知書を交付していたものと認められ,自動的に契約更新がされてきたとはいえない。
 しかし,…Xは,平成19年10月1日に郵便事業株式会社に時給制契約社員である期間雇用社員として採用され,その後,同社ないしこれを吸収合併したYとの間で,平成27年9月30日までの間,8年間にわたり,6か月ごとに期間雇用契約の更新手続をし,雇用関係が継続してきたことが認められ,本件雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある者と認められる(なお,…Xが郵便事業株式会社及びこれを吸収合併したYとの間で雇用契約を更新していた期間は8年間であり,それ以前の郵便公社での勤務は,法的地位が異なっており,Yにおいて年次有給休暇の支給基準日を郵政公社における勤務開始日としているとしても,Xが8年8か月にわたり雇用契約を更新してきたとはいえない。)。」

「…Xは,平成25年12月頃右変形性膝関節症を発症した後,通院・加療を続けていたこと,主として同症状のため,同年10月から平成26年3月までの間,同年4月から同年9月までの間は,いずれも大幅に欠勤日数が出勤日数を上回っており,この間,本件疾病や体調不良を理由とする突発欠勤も多かったこと(なお,Yにおいて,承認欠勤とは,欠勤を承認し休暇を認めるという趣旨ではなく,無断欠勤として取り扱わないという趣旨にすぎない〔人証略〕。),同年10月から平成27年3月までの間はかろうじて出勤日数が欠勤日数を上回ったが,同年4月から同年8月中旬頃までの間は,1日も出勤していなかったこと,F総括課長は,同年4月17日,同年7月28日及び同月30日に,H総括課長は,同年8月20日に,それぞれXと電話で話をして,病状や回復の見込みについて尋ねたが,痛みがなくならず,むしろ,同日の会話では,手術を行う可能性も示唆されていたこと,このような状況の下,D局長は,同月21日頃,Xについて,同年9月30日の雇用期間満了をもって契約更新を拒絶することを決定し,同年8月21日,Xに対し,その旨通知したこと,これについて,Xは,直ちに異議を述べず,約1か月後の同年9月24日付け上申書により,本件雇止めの撤回を求めたものの,上記症状の回復や職場復帰の可能性を裏付ける診断書等を提出せず,同月30日まで欠勤を続けたため,上記通知どおり,同日,本件雇止めが行われたことが認められる。
 上記によれば,本件雇止めは,Xの病状や勤務状況等に照らし,Xが本件雇用契約における職務を全うできないとの判断に基づいて行われたものであり,期間雇用社員について,10日間の病気休暇や5日間の介護休暇の取得が認められるのだとしても,Xは,その承認を得ておらず(…),上記D局長の判断が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当でないとは認め難い。」

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