学校法人追手門学院(降格等)事件‐大阪地判 令元・6・12 労働判例1215号46頁

【事案】
 Xが,Yによる降格及びこれに伴う賃金減額に係る措置が無効であると主張して,Yに対し,降格前の労働契約上の地位の確認等を求めたもの。

【判断】
「(1) 人事権行使としての降格の有効性判断に係る判断枠組について
 ア Xの本俸は,等級によって決定される職能給のみによって構成され(前提事実(2)ア(ア)),等級は,職務遂行能力に応じて定められるものである(前提事実(2)イ(ア))ところ,事務職員職能等級規程は,人事評価の結果として等級を引き下げる場合があることを明記している(同(エ))。
 以上によれば,Yは,本件降格のように,人事評価によって,職務遂行能力に応じて定められる等級を引き下げる形の降格を行う契約上の根拠を有すると認められる。
 イ そして,かかる契約上の根拠に基づく降格は,Yの人事評価権に基づくものである限り,原則として使用者であるYの裁量に委ねられるものの,著しく不合理な評価によって,Xに大きな不利益を与える場合には,人事権を濫用したものとして無効になると解するのが相当である。」
「ウ Xの主張について
 Xは,XがYからの退職勧奨に応じなかったため,Yがその人事権を濫用して,本件評価を行ったと主張する。
 この点,上記認定事実のとおり,①Xは,平成25年度及び平成26年度においてA評価を受けたこと(認定事実(2)),②Yは,専任事務職員に対し,早期退職の案内を行ったこと(認定事実(5)),③Yは,Xに対し,指名研修において,退職を含む選択肢を示したこと(認定事実(8)イ(イ)),④Yは,Xに対し,複数回退職勧奨を行ったこと(同(ウ)(エ)(オ)),以上の事実が認められ,また,Xは,本件対象期間につき,Xの業務について,不満を述べられたり,注意を受けたことはなく,指名研修を受けた時点以降に,勤務態度についての指摘を受けるようになったと供述している。
 しかしながら,上記認定説示したとおり,平成27年度におけるXの業務内容は,職務等級4級の専任職員として,重点業務その他本件実施要綱に掲げられた項目について,十分な達成度に達していなかったと認められ,かかるXの職務状況等に鑑みると,Xが指名研修の実施に至るまで,上司等から何らの注意を受けることがなかったとは認め難い。これらの点を総合的に勘案すると,Yにおいて,Xが退職勧奨に応じなかったことを理由として,本件評価を行ったとは認められない。
 エ 小括
 以上のとおりであって,27年度評価においては,評点の合計点(220点)と評価(B)との間に,本件実施要綱に定められたとおりの対応関係がある(認定事実(1)イ,ウ,同(2)イ(ア))ところ,評点算出の基礎となったF事務長による一次評価及びG部長による二次評価は,いずれについても,人事権を濫用したものであるとは認められない。したがって,この点に関するXの主張は,いずれも理由がない。」
「28年評価においては,評点の合計点(150点)と評価(B)との間に,本件実施要綱に定められたとおりの対応関係がある(認定事実(1)イ,ウ,同(6)イ(ア))ところ,上記認定説示した点からすれば,Xの業務内容は,職務等級4級の専任職員として,重点業務その他本件実施要綱に掲げられた項目について,十分な達成度に達していなかったことが認められる。そうすると,上記評点算出の基礎となったJ課長による一次評価及びK総務室長による二次評価は,いずれについても,人事権を濫用したものであるとはいえない。
 なお,上記認定説示したとおり,28年度評価についても,XがYからの退職勧奨に応じなかったために,本件評価を行ったとは認められず,この点に関するXの主張は採用できない。
(4) まとめ
 以上によれば,本件評価が人事権を濫用してなされたものであるとはいえないから,本件評価に基づいてなされた本件降格について,人事権を濫用したものということはできない。」