フクダ電子長野販売事件‐長野地松本支判 平29・5・17 労働経済判例速報2318号26頁

【事案】
 Xらが、Y1社の代表取締役であるY2から在職中にパワーハラスメントを受けたと主張して、Yらに対し、慰謝料等を請求したもの。

【判断】
「ア Y2のX2に対する下記の発言はいずれも不法行為に当たる。
 (ア) 平成25年4月1日の「係長もいますね。女性の方もいらっしゃいます。そういう方も含めてですね、これは私がしている人事ではありませんから、私ができないと思ったら降格してもらいます」との発言は、X1とX2を降格候補者として挙げており、根拠もなく同Xらの能力を低くみるものである。
 (イ) 同月8日の「人間、歳をとると性格も考え方も変わらない」との発言は、年齢のみによってX2の能力を低くみるものである。
 (ウ) 同月15日の「自分の改革に抵抗する抵抗勢力は異動願いを出せ。50代はもう性格も考え方も変わらないから」との発言は、X2を含む50代の者を代表者に刃向かう者としており、年齢のみによってX2らの勤務態度を低くみるものである。同月19日の「社員の入替えは必要だ。新陳代謝が良くなり活性化する。50代は転勤願を出せ」との発言も、X2を含む50代の者をY1会社の役に立たないとしており、年齢のみによってX2らの能力を低くみるものである。
 イ Y2は、同年7月22日、X2に対して、平成25年夏季賞与のマイナス考課について説明した際に「辞めていいぞ」と述べているところ、・・・マイナス考課は理由のないものであって、理由のなく賞与を減額した上で、「辞めていいぞ」と述べているのであるから、上記マイナス考課はX2を退職させる目的でされたものと認められる。
 また、本件降格処分も・・・理由のないものである上、Y2は、本件降格処分を行うに当たって、処分の軽重を決定する需要な要素であるX2の経理処理によってY1会社に生じた損害の多寡の確認をしていないし、懲戒処分の基準を定めた賞罰規程の内容の確認もしていないのであって、このような結論ありきの姿勢は、本件降格処分がX2を退職させる目的であったことを推認させるものといえる。
 ウ 上記イのとおり、Y2がX2を退職させる目的で理由のない賞与減額と懲戒処分を立て続けに行ったことは悪質である。また、上記アのとおり、Y2がX2を侮辱する発言を繰り返していることも軽視できない。」

「ア Y2のX1に対する下記の発言はいずれも不法行為に当たる。
 (ア) 平成25年4月1日の発言については、上記…ア(ア)と同じである。
 (イ) 同月15日及び19日の発言については、上記…ア(ウ)と同じである。
 (ウ) 同年5月18日の「事務員は営業会議の日に残業みたいな仕事をしていないで、勉強会をしろ。おばさん達の井戸端会議じゃないから、議事録を作れ」との発言は、事務を担当する者が仕事をしていないと根拠もなく決めつけるものである。
 (エ) 同月20日の自身の夫と比べても自身の給与が高いと思わないかとの発言は、X1が給与に見合った仕事をしていないと根拠もなく決めつけるものである。
 (オ) 同年7月12日の「倉庫に行ってもらう」との発言は、仕事内容を変更して嫌がらせをする趣旨のものである。」

「Y2の同年4月15日と19日の発言は、50代であったX3への不法行為ともなる」

「Y2の同年4月8日の「俺が辞めさせた奴がなんでここにいるんだ」との発言は、X4を以前の会社で辞めさせた役に立たない者とする趣旨のものであって、不法行為にあたる」

「X2及びX1に対するマイナス考課には理由がなく、X2及びX1には、減給分の請求が認められる。」

「Y2は、X2を退職させる目的で理由のない賞与減額と懲戒処分を行ったところ、X2は、その直後に退職したのであり、Y1会社からの退職勧奨によって退職した場合と同視できる。したがって、X2には、差額退職金の請求が認められる。」

「(1)ア X2は、・・・誰を接待したのか不明の支払申請書や飲食日が不明又は修正液で白塗りされた請求書に基づいてFの交際費の経理処理をしたのであるが、このようなY1会社のための費用であるのか、当該事業年度の費用なのかを確認することなく経理処理したことはずさんなものというほかない。
 イ 他方、上記の事情によってFの交際費として計上したものが税務署から交際費であることを否認されたといような事情は見当たらず、X2の上記の経理処理がY1会社の納付した延滞税及び重加算税についてどの程度の原因となっていたのかは証拠上明らかではない。また、本社は、Y1会社の交際費が販売子会社の中でも突出して多いことをかねてから把握していながら、Y1会社が利益を上げていたとして、Y1会社の交際費について精査することがなかったのであり(書証略)、顧問会計事務所も問題点を指摘しなかったことも併せ考慮すれば、X2の交際費の経理処理が延滞税及び重加算税に影響を与えていたとしても、それを主にX2の責任であったとすることはできない。
 ウ したがって、X2の会計処理は、就業規則93条1項4号所定の事由に当たるものの、上記イの事情に照らすと、X2を降格処分としてことは相当性を欠くというべきである。
 (2) Y1会社が就業規則93条1項4号に該当するという報告懈怠及び虚偽報告の2点は、いずれも、本件降格処分の理由として明示されていないし、Y1会社に具体的な損害を与えたわけでもなく、降格処分の基準である「災害その他事故を発生させたとき」にも当たらない。また、そもそも、報告懈怠の点については、「虚偽の報告または虚偽の申し立て等」という積極的な虚偽報告等と同視できない。
 したがって、これらを本件降格処分の根拠とすることはできない。」